偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

日間賀島旅行記その2


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朝食には昨日の伊勢海老の殻

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部屋にお風呂があるので早朝に一回入り、その後は寝転がって足湯にしました。最高の部屋!

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タコまんじゅうと、しらすソフト。
しらすの塩味とアイスの甘さがマッチしてて、チョコの種みたいなおいしさ!

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猫の島。

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イソギンチャクやイソギンチャクの幼虫や亀の手など。

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ハイジのブランコ。
向こうが海なのでめちゃくちゃ怖かったです。

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旅館の晩飯は足2本だったので、せっかくだし今日はまる茹でを!顎が疲れたけど取れたては旨味も食感も違ってめちゃ美味でした!

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帰りは南知多らへんの寂れた喫茶店へ。
寂れてるけど、ここのパフェが最高でした。
コーンフレークとホイップとバニラアイスの黄金の組み合わせに、8種類ものフルーツを使ってて見た目も美しく素晴らしいパフェでした。


そんな感じで帰ってきました!楽しかった!!


..................おわり!!

日間賀島旅行記その1

こんにちは!

さて、私は今日日間賀島に来ています!
新婚旅行といえばハワイですが、コロナの影響で海外は諦め、籍を入れた段階ではもう北海道くらいにしとくつもりだったんですが、状況的にそれすら微妙になってきたので、県を跨ぐ移動はなく、なおかつ"海外"ではある日間賀島に来ることになりました!

以下はその1日目の記録写真になります。

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歓迎のタコ!

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せっかく眺めがいいのに、海に来ると下ばかり見てしまいます。フジツボさんとかテトラポットさんとかびっしり集まってるのが可愛くていつまででも見ていてしまいます。

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猫さんもたくさんいました!

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お昼はタコさんの唐揚げとしらすさんの丼です!
しらすさんってあんまこれまで印象なかったけどこんだけ寄って集ってかかってこられるとさすがに美味いっすね。

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おやつの大アサリです!

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旅館は絶景Ocean View!
夕焼けが綺麗だしなんとお部屋に露天風呂がついてます!いつでも部屋でお風呂に入れるの最高すぎてこのあとめちゃくちゃお風呂入りました!

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晩御飯のフルコースも最高でした!
居酒屋で4人前のお造りを筆頭に、初めて食べたけど美味しかった土瓶蒸し、初めて食べたけど骨が全部軟骨でシン食感、知多牛のステーキは柔らかく脂の乗り方がご馳走だけど食べやすいレベルで丁度よく、天ぷらは家で作るより美味く、デザートのアイスはホームランバーの味でした!

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夜は露天風呂で宴会です!

なんか、こういう日記みたいなブログ書くのめちゃくちゃ下手ですわ。
こういうの上手い人どんだけ自我が強いんだろう。凄い。

三津田信三『忌名の如き贄るもの』感想


刀城言耶シリーズ第8長編。


人生で降りかかる災厄を「忌名」に託すために行われる『忌名の儀礼』。
先輩の婚約者がこの儀礼の伝わる虫頸村の出身者である縁から、2人の仲人のような立場で村への挨拶に付き添うことになった刀城言耶。
しかし村ではまさに忌名の儀礼の最中に青年が殺害される事件が起きていて......。


短編集の前作から2年、長編としても3年ぶりと、幽女→碆霊の6年間の不在を思えばコンスタントに出た最新作。
しかしその分、どうしてもシリーズの初期作より色んな意味で軽くなっている印象は否めません。

例えば序盤のもうお馴染みとなった祖父江偲さんやクロさんとのやり取りは完全にラノベだし(祖父江偲さんは好きだから良いけど......)、事件の内容にしても今回は1人が目を刺されて死ぬだけという、ちょっとしょぼいもの(不謹慎ですかね)。
事件の謎も、細かいものは色々あるものの、要するに「動機+アリバイ=犯人は誰?」というのを延々と調べ続けていてかなり地味。
ついでに言うと、村の地図とかも付いてないからアリバイ云々の話を把握するのもなかなか骨が折れます......。
怪異に関しても、忌名という発想はもちろん面白いし、冒頭のエドガーアランポーオマージュのいつもの怪異体験記もやっぱり怖面白いんですけど、言ってしまえば肝試しの道中で細々とした怪異が襲ってくるみたいなものでいつもに比べるとインパクトは薄め。
そしてクライマックスの多重解決にしても、いつもの二転三転から四転五転を経て七転八倒するというほどではなく、それぞれ意外なもののあっさり終わる感は否めません。

やはり初期作のような濃密さを毎度望むのは酷というものか......と思いつつ、期待していただけに肩透かしを食らったような気分............に、なりかけたわけですが............。


最後に明かされるとある真相に至って、ミステリとしての意外性とゾワゾワと鳥肌の立つような怖さが共にガツンと強烈に襲ってきてちょっと手が震えるくらいでした。
読み終えてみればこれをやるために全ての設定を作ったとしか思えないのですが、そうした設定に色んな意味合いを持たせてあることで不自然さやご都合主義っぽさを感じさせないのはさすがとしか言いようがなく、某『予言の島』の作者にも見習って欲しいところですね。

そんな感じで、正直期待外れという印象で読み進めていると最後で「やっぱりこのシリーズは凄え」と思い知らされる傑作でした。


以下ネタバレで少し

































































































































はい、ネタバレ感想です。


刀城言耶が警部に見守られながら解決編をやっていくのに萌えつつも、村内の人物から村外の意外だけど面白くはない人物を経て、村内で生死不明になっている人物という1番ベタなところに着地します。
それでも、八年間備蓄食だけで生き延びていたという壮絶な仮説には驚かされるし、その動機もまた凄みがあります。

......と、普通のミステリならここまででも十分満足のいくくらいの驚きは味わえたのですが、刀城言耶シリーズがそれで終わるはずもなく......。

まず明かされる「尼耳家が村八分に遭っていた」という村の秘密でもうびっくりして3mmくらい浮きました。
シンプルにして今まで見えていたもの全てをひっくり返すような真相。それが、村の側からは件淙の狂気と、周りの人々の彼への気遣いから隠され、多方刀城言耶や我々読者には先輩と李千子の結婚が上手くいって欲しいと願うばかりに盲点に入ってしまいます。
そして、そこから芋づる式に明かされる真犯人の正体とその動機には、驚きと切なさと信じたくない気持ちと悍ましさとが綯い交ぜになった複雑で巨大な感情に襲われます。
好きな人に会うために火事を起こすーー所謂「八百屋お七」式の動機を主眼にしたミステリは私が思いつく限りでも3作くらいありますが、本作はその捻り方がめちゃくちゃ巧妙です。
村八分の件自体が意外な上で、実家が村八分になっていることがバレたら結婚できない→葬式があれば村八分を隠せる......という捻り方がされてるので、このネタだとは流石に想像もつかず、初めてこのパターンを読んだ時みたいな衝撃を喰らってしまいました。

そこから、李千子への恐れとそのあまりに狂った動機の切実さへの哀しみとを感じつつ、最後の最後でそれが「畏れ」に変わる......という「謎が解けて最後に残る怪異」のインパクトも素晴らしい。

ちなみに、八百屋お七ネタと、犯人が使った物理的なトリックはそれぞれ私の好きな某作家と某作家の有名作でも使われていて、その2人の作家はよく並べて語られることもあるのでそこから取ったのかなぁ......とも想像してしまいます。

まぁそんな感じで、使い古されたネタを使いながらも舞台設定と物語の構築と少しの捻りによって全く新しい驚きを味わわせてくれる傑作でした。

岡崎琢磨『夏を取り戻す』感想

『珈琲屋タレーラン』でお馴染みの著者による、東京創元社"ミステリ・フロンティア"叢書の記念すべき100冊目となった作品です。

単行本刊行時から話題にはなってましたが、このたび文庫化されたので、そして、繁忙期のため忙しく過ごす間に夏が終わりかけている私にピッタリなタイトルだと思い読んでみました。




とある公営団地で小学四年生の子供たちが1人ずつ失踪しては数日で戻ってくる事件(?)が発生。
月刊誌の新人編集者の猿渡と"ダメ人間"のベテラン記者佐々木は子供たちの悪戯と目して取材を始めるが......。


といった感じの、著者のパブリックイメージ通りの人が死なないミステリ。
と言いつつ、著作を読むの初めてだったのでほんとにイメージでしかないんですが、ライトでところどころにユーモアもありつつ、登場人物たちが秘めたものが明かされていくにつれその切実さに胸を打たれる......という流れはまさになんとなくイメージしてた通りの作風でした。

ただ、一つだけ謝らなくてはならないのはミステリとしてもライトなんだと思っていたこと。
なんせ巧みな伏線が成立させる意外な真相といい、それが明かされる際の演出といい、細かい部分の意外性の量といい、そうした謎解きが物語を深みのあるものにしていく点といい、満腹大満足の大好きな青春ミステリだったんですから!

まず序盤は子供たち1人ずつの失踪の謎を主人公たちが明らかにしていく倒叙ものの連作短編のような趣で進んでいきます。
しかしこの辺で使われるトリックなんかは子供たちが考えただけあってミステリとしてそこまで目新しくも面白くもないもの。
それだけに、油断させられていました。
そこから段々と長編としての構成になっていくに従って、子供たちの意図や過去の出来事が思いのほか深遠なものなのでは......と示唆され、やがてそれらが明かされるや、その真実に胸が締め付けられる......という、まぁベタっちゃベタだけどだからこそ安心して楽しめました。

ただ、個人的にあのエピローグだけはちょっと蛇足な気がしてしまいました。
(ネタバレ→)同窓会で再会するのは良いとしても、最後に七海ちゃんとの再会までが(直前までとは言え)実質描かれるのはやりすぎというか、「この後目を覚ますのだろうか、覚ましてくれたら良いな......」くらいの方が余韻が残る気はしちゃいます。
ほろ苦さもあるだけに最後くらいは曇りなきハッピーエンドに......っていうのも著者の優しさなのかもしれませんが、まぁ好みで言えばそんな感じっすね。

とはいえ、どストレートなエンタメ小説にしてミステリとしての満足度も高い傑作でした。

澤村伊智『予言の島』感想

『ぼぎわんが、来る』でお馴染みの著者によるミステリホラー長編。

これ、ミステリ界隈で話題になっていたのでかなり期待しちゃったんですが、結果的には8割くらいは期待通りだけど手放しで褒められないところもあり......という感じ。

まず、帯文とかでもおもっくそ煽ってるから言っちゃっていいと思うけど、ラストのどんでん返しは身構えていても驚かされました。
ミステリを読み慣れてくるとどうしても驚き慣れてしまって多少のことでは動じなくなってしまうものですが、本作の結末はむしろ「多少のこと」とすら言っていいようなことなのにこれだけ驚かされてしまうから凄いっすよね。
それはもうひとえに演出の巧さと、何としても読者を驚かせてやろうという気概のためだと思います。

結末のことばかり語ってしまうのはミステリファンの悪い癖ですが、もちろん結末に至るまでのストーリーも面白かったです。
予言の島という舞台設定に始まり、そこそこ意外な最初の死者で一気に引き込み、アラフォー独身の主人公の恋愛に対して積極的になれないけど惹かれつつある......みたいなラブストーリー未満くらいのやり取りも良いっす。
また脇役たちも魅力的だったり、怨霊から逃げるサバイバル要素が入ってきたり、とっちらかっているように見えて物語全体が一つのテーマでまとまっていたりと、お話としても面白かったです。

......んですけど、手放しで褒められないってのが、オチから逆算して作ってる感じがし過ぎるところで。
もちろん、ミステリ、特に意外な結末のものなんかは結末から逆算して設定を作ったり伏線を張ったりするものではあるんでしょうが、それにしても(ネタバレ→)ダミーの癒着母子なんかはわざとらしすぎる......というかむしろ要らなかったんじゃないかと思ってしまいます。

あと、民俗学ミステリファンを揶揄するような感じもちょっと鼻につきましたね。
詳しくはないけどディスカバージャパンて言葉くらいは知っとるしその上でファンタジーとして楽しんでるんだから放っといてよと思います。
このへん難しいところで、ミステリファンってマゾなところがあるので作品の中でディスられること自体は好きだったりするけど、わざわざ話の流れを遮ってディスカバージャパンとかまで持ち出してまでやられると鬱陶しいというか。
その割に本作はなんかちょっとノリが軽めで、まずは三津田京極の重厚感出してから言ってくれやみたいな。

すみません、こんなに悪口書くつもりじゃなかったんですけど、でもその辺のもにゃったのを抜きにすればめちゃくちゃ面白かったし好きです。オススメ!(雑まとめ)

似鳥鶏『叙述トリック短編集』感想

良くも悪くも話題になっていた本作、文庫化を機に読んでみました。


ほんとにタイトルの通りなのでそれ以外特に付け加えることもない、全話に叙述トリックが仕掛けられている(ことを公言している)短編集です。

まぁはっきり言ってこの試み自体がある種無茶というか、叙述トリックであることを宣言している時点で読者をスッキリ騙すことはまずもって不可能というもので。
公言しちゃってる以上、やり方としては読者が本をぶん投げたくなるくらいアコギな手を使って欺く方向か、慣れた読者なら当てられる程度の難易度である種のクイズ本的な面白さを出していく方向のどっちかだと思います。
そして本書はその後者でした。

個人的には高校一年生の時に叙述トリックを知って以来、叙述トリックには常に「世界が反転するような衝撃」を求めてしまうものでして、こういうお手軽に叙述トリックを楽しむってのはどうしてもなんか違うような気がしてしまうのはあるんですが......。
とはいえ、その「なんか違う」ってのは例えるなら映画館で観る映画と金曜ロードショーの違いみたいなもの。気軽にワイワイ楽しめるという意味で金ローには金ローの良さがあるというもの。
要は何が言いたいかって、期待してなかったわりに結構楽しめちゃいましたって話っす。

私は本作の全話のうち油断していた1話目と、叙述トリックとは言えない気がする某話目以外は分かっちゃったんですが、「解けたぜ!」っていうスッキリ感と、初読から再読のように伏線を拾う読み方が出来たので、分かってても楽しいってのもありましたね。

ただ、一つネックなのが1話目がめちゃくちゃつまんないんですよね。
私が叙述トリックにもう一つ求めているのがお話の面白さであって、ストーリーに最低限の魅力がなくてただどんでん返しだけされても「あっそ」で終わっちゃうというもので。
その点、本書の1話目はその典型の、確かに分からなかったけど明かされたからといって別にどうでもいい話で、「この本大丈夫かいな......」と思わされました。
しかし2話目は(やや鼻につくものの)大学生の爽やかでコミュ障な恋愛ものでお話としても面白く、それ以降の話もそれぞれサスペンス風味や刑事モノ風味など味付けも異なりバラエティ豊かな楽しさがありました。
それだけに、なんでこの無駄にど滑り散らかしてる一番恥ずかしい自称ユーモアミステリみたいなのを1話目にしてしまったのかが訝しいところではあります。
ともあれ、1話目を読んだ時点ではもうけちょんけちょんにディスるつもりが、それ以降意外と楽しんでしまったし、最終話のちょっとメタ的なギャグも滑ってるけど憎めない感じで軽やかな余韻を残してくれるし、嫌いじゃないです。

あ、あと、前書きの松方の例はあんま叙述トリックじゃない気がすんだよなぁ。



(ネタバレ→)前書きの太字部分のヒントがあまりにも何か仕掛けてる感じ満載で一発で分かっちゃったし、あれの本当の意味が分かれば1話目以外は大ヒント付きで解けないはずもない......っていうのが流石に親切すぎかと......。
あと、なんとなく買った本の結末のやつは作中でのキャラクターの語りに言い落としがあるだけで叙述トリックと呼べるのかどうかめちゃくちゃ微妙は気がします......。
という2点がちょっと不満かな。

ラーメンズ第16回公演『TEXT』


《収録内容》
50 on 5/同音異義の交錯/不透明な会話/条例/スーパージョッキー/銀河鉄道の夜のような夜


第16回にして『TEXT』をタイトルに冠したこの公演は、タイトルの通りこれまで以上に言葉遊びにこだわって芸術性を感じる域にまで高めたコンセプチュアルな公演です。
また、最終話では(ひさしぶりに)ガッツリとこれまでのお話の伏線を回収してたりもして、そういう点では釈然としなかった前作とは対照的なようにも思います。
ただ、伏線が回収されたからといって釈然とするわけではなく、最終話の結末もやはり釈然としない(人によっていかようにも解釈できる)という意味では前作同様のいい意味で突き放した感じもあって、ともあれこのくらい知的ぶってる方が好みではあるので大変面白かったです。笑えるというよりは興味深いという意味あいで。


「50on5」

シン・五十音ポスターを制作しようとする男たちの物語。
役柄の入れ替わりの激しさは「レストランそれぞれ」を、要はあいうえお作文に趣向を凝らしていってるという点では「ドラマチックカウント」なんかを思い出す、ラーメンズらしい気がするお話です。
役の入れ替わりが横一列で整然としているので、どこか作り物めいているというか、舞台を見ているということを自覚させられるような感覚がありました。
タイトルの50はそのまま五十音のことですが、5の方について最後に明示される構造は"収束"感があり、これまた作り物めいて感じられます。
言いたいことは分かりやすいんだけど意味は分からなくて得体の知れないオチも良いっすね。奇妙な味。



「同音異議の交錯」

2人がそれぞれ全く別のお話を並行して演じつつ、ところどころで同音異義語が交錯するというタイトルまんまの作品です。
同じ言葉の二重の意味を笑いに変えるところはアンジャッシュっぽさも感じますが、会話のすれ違いとかじゃなくてそもそも2人が会話すらしていないあたりの実験的というか、捻くれたやり口はラーメンズらしい気がします。
最後の『カメラを止めるな』みたいなやつでは、膨大な量の拾いやすい伏線にうんうんと頷いていると時々拾えてなかったやつがあってそう来たかと笑わされてしまいました。
変わったことをやっといてオチはアホみたいにベタなのも面白かったです。



「不透明な会話」

比喩としての不透明と物理的な不透明をかけたナイスタイトル。
徹頭徹尾に概念を弄ぶような会話の愉快さは、レベルは違えど大学時代に部室で友達とくだらねえ議論を繰り返していたことを思い出さされて心地よいです。
なんつーか、こういうドヤ顔で詭弁を弄してる時の小林賢太郎がめちゃくちゃ好きだし、それに騙されちゃう片桐さんも別に好きではないけど可愛いと思います。



「条例」

コンセプトアルバム好きマンとしては、こういう前の話との意外な繋げ方とかめちゃくちゃ好きなんすよね。
凡例が終わった後の2周目でこれから何が行われるのかが分かった瞬間「ふへへ〜これがやりたかったのか可愛いな小林は〜」と萌えてしていました。
また出すけど『カメラを止めるな』が好きなので、こういう「何が起こるのか分かった上でそれが実際に行われていく」ことによる笑いが好きなんですよね。
最後の条例は存在を忘れてたんで「そういえば」というのもあってさらに面白かったですが、やはり吹き替えのやつが好きです。



スーパージョッキー

ギリジンものですが今回はギリジンじゃなくてスーパージョッキー片桐(ほんとは片桐じゃなくてなんとかいうキャラ名だったけど忘れた)。
なんというか、ギリジンはキャラ自体がわけ分かんなくて面白いんだけど、スーパージョッキーは実在の職業なのでどうしてもちょっと普通に感じてしまってそんなにめちゃくちゃ面白くはなかったです......。
とはいえやや滑ってること自体をネタにしてくるアドリブなのか台本なのか分からないあたりはさすがに笑いました。
それより何より小林さんがめちゃくちゃ可愛いのでそれだけでも得した気分になります。



銀河鉄道の夜のような夜」

これまで観てきたラーメンズの公演の中でも最も最終話らしい最終話。
ここまでのほとんどのコントから少しずつ要素が入っていて、それは伏線回収スゲーというよりはみんな繋がってるんだという心地よさに近い感覚にさせてくれるものです。

実は恥ずかしながら「銀河鉄道の夜」を読んだことがないのですが、Wikipediaであらすじを調べたところかなり忠実に筋をなぞっているらしいと知って驚きました。
そんで、原典に出てくるらしいキーワードを軸に各パートがそれぞれ「活版印刷」「牛乳屋」などと題せるような一つの短いコントになっていて、それが連なって全体が構成されているのでいろんなアトラクションがある遊園地みたいな楽しさがあります。
また、出てくるワードがいちいちノスタルジックなのでエモいし、これが原典に沿ったものなら「銀河鉄道の夜」も読んでみなきゃと思いました。

しかし、そんな楽しさの中にもかなりの頻度で不穏な空気が挿入されるので所々でハッとさせられます。こういう、笑えるコントとシリアスな演劇との間をフラフラと蛇行するようなところもラーメンズの魅力であり、この話ではそれが最大限に出てると思います。

そして、"銀河鉄道"に乗る最後のシークエンスではいよいよそのシリアスさが前面に押し出され、笑っていいのかどうなのか、笑ったと思ったら次の瞬間ヒェッ!とかそんな感じのヒリヒリした感覚がめっちゃ良かったです。
これまでのコントのあのワードやあの趣向が今度は切なさのために再演され、"その時"がやってくるに至ってふえぇ〜っ😂ってなっちゃいました。

ラストについては色々と解釈がありそうだし、はっきりさせずに観客にもやもやと考えさせることが狙いなんでしょうが、個人的にはすごくざっくりなんですが(ネタバレ→)2人は元々別の世界の住人だったという印象を受けました。
というのも、(ネタバレ→)この物語は小林さん=トキワの視点で進むのに、最後に自分がここにいないことに気付くのは片桐さん=カネムラの方。だから単にカネムラの存在がトキワの夢やイマジナリーってわけじゃなくて、それぞれが孤独を抱えた関わりのないはずの2人で、そんな彼らが祭りの夜、銀河鉄道の乗客になることで一瞬だけ交錯したっていうことなのかなぁ、と。
それは(ネタバレ→)「同音異議の交錯」で2人が全く別々の物語の中にいながらも同音のワードだけで繋がっていたように。
頭が悪いのでこういう感覚的というか印象レベルの解釈しかできないんすけど、そんな2人に切なくなるとともに、それでも孤独じゃなかったんだという優しさも感じさせる不思議な余韻の中を銀河鉄道が走っていく、素敵すぎる終わり方だと思います。