偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

しとやかな獣(1962)

大好きなギリシャラブというバンドに同名の曲があるので気になって観ました。
別に内容は曲とそんな関係なかったけど面白かった!



芸能プロに勤めながら会社の金を横領する息子、小説家の二号として金を貢がれている娘、かれらに指示を出す元海軍中佐の父親と母親。他人の金で団地に暮らす一家の部屋には金を横領された芸能プロの社長や小説家が訪れるが、両親はのらりくらりと躱す。しかし、その次に部屋を訪れたのは、息子と肉体関係を持っていた芸能プロの会計の女で......。

タイトルからてっきりえっちな映画だと思ってたら人間の欲をほぼ団地の一室のワンシチュエーションに近い舞台で描いたブラックコメディで、肩透かしを喰らいつつもそれはそれでめちゃくちゃ面白かった!
あと、あややこと若尾文子の映画だと思ってたら彼女が演じる会計の女もキーは握っていつつ別に主役ではなく、他人の金で暮らす一家がメインで、ちょっと『パラサイト』っぽさもありました。

とにかくずっと金の話をしてるだけなんですけど、登場人物全員悪どくて身勝手で欲深くて、そのある種ギラギラした感じは戦争の傷を抱えながらもはや全然戦後でもなくなって経済成長していった当時ならではの感覚かなぁと、酒も車も金も興味ない私たち世代からすると昭和レトロを感じて面白かったです。

あと映像もカッコよくて、部屋全体を映すような客観的で広い構図のショットからキャラのクロースアップへとバシバシ切り替わるとことか、中盤ごろだったと思うけどよく分からんけどめちゃくちゃ赤い夕陽が映されたりとか、カッコよかったです。

そしてラストシーンも狂騒の後で嫌〜な後味でゾクゾクする感じが良いですね。