偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

北大路公子『石の裏にも三年』感想

たまには笑えるやつをと思い、北大路公子を。


実は読むの2冊目で、以前『生きていてもいいかしら日記』を読んだのですが、特に感想を書くようなこともなかったのでブログに載せるのは本書が初。

とはいえ本書も内容は『生きていても〜』とそう変わらないので特に書くことはないんですけど。
ただ、とにかくただひたすらに面白いので紹介しておきたいなと思ってちょっとだけ書きます。

この人、北海道在住のアラフィフくらい(?)の独身で両親と暮らしてるエッセイストなんですけど、とにかくほんとにぐうたらしてて、雪かきの話と親との会話と妄想と通院の話がメインで、時々友達と遠出したりくらいでほんとに変化に乏しい日記なんだけど、それがなぜだかべらぼうに面白いんですよね。

冗談ってのは真顔で淡々と言うのが1番面白いと思うのですが、この人の文章はまさにそんな感じ。
身も蓋もないくらい淡々と、思ったことを呟いてみただけですよって感じですごく面白いことを書くから、笑いの直撃を喰らって思わず声が出ちゃいます。「ふへへっ」て。
「寒い」「2億円欲しい」「肩が痛い」みたいなことしか書かれてないのに、この天性の語り口の面白さで全然飽きないしずっと読んでいたくなるんですよね。どんだけ読んでもなんにも有意義なことはないにも関わらず!

あと、嫌なことを書かないところも徹底していて。
大半は自虐ネタなんだけど、本人に悲観的なところがなく、むしろ開き直ってるからこっちも遠慮なく笑えるんですよね。
人の悪口も書かれないわけではないんだけど、必ず冗談だって分かる書かれ方で、ガチのはないから安心して読めます。


という感じで、しょうもない内容も、技巧的でない平坦な文章も、ぱっと見「こんくらいなら書けそう」と思わされるけど、その実これだけ人を笑わせることはなかなか出来ないと思います。
全然上手そうに見せずにめちゃくちゃ上手い、名人芸のエッセイです。超オススメ。