偽物の映画館

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ルトガー・ハウアー/危険な愛

無軌道でワイルドな芸術家のエリックと、彼がヒッチハイクで出会ったGirl・オルハとの恋を描いた純愛映画です。

ルトガー・ハウアー 危険な愛 [DVD]

ルトガー・ハウアー 危険な愛 [DVD]

  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: DVD



こないだうちハマってて師と仰ぐまでになったポール・ヴァーホーベン監督の、観れる範囲で一番古い作品。

ホーベン先生の作品はどれも酷く悪趣味で品性下劣でクソ以下の最低映画なんですが、そんな中に一本筋を通して流れる純粋なエモーションがあるのがめちゃくちゃ好きで、原点とも言える本作はそんな純粋さが最も分かりやすく現れた一作なんですね。


冒頭からして、夜の闇に紛れて鈍器で男を撲殺して女を銃で撃ち殺す主人公の映像のカッコ良さがもうガンギマってて一目惚れみたいになっちゃったんだけど、そっから主人公の傍若無人な振る舞いと、しかしなんかワケ有り気な感じ......そこから回想で本筋のエリックとオルハの恋物語が始まるんですが、これが非常に美しいんですよ。
いや、もちろんヴァーホーベン先生なので、絵面は汚いっすよ。うんこもゲロも出てくるし2人とも本編の半分くらいは裸ですからね。しかも彼らのやることなすこともうワイルド過ぎてめちゃくちゃですしね。色んなとこでやりたい放題やって迷惑かけまくってる。近所にいたら最悪だと思うんです。
......思うんですけど、でもその愛だけは強く透き通ってるから、どんなに破天荒でも感情移入しちゃうんですよ。

あと、やっぱルトガー・ハウアーの野性味あふれる色気はヤバいし、うんこを躊躇なく手で掴めるところなんか、実社会の法則を超越してる感じがしてカッコいいんですよね。打算がないというか。
そしてオルハ役のモニク・ヴァン・デ・ヴェンさんもめちゃくちゃ可愛いしエロい!
他に出演作があんまりないのが惜しいくらい、魅惑的なヒロインでした。おっぱいも素晴らしい!エロい!女王陛下のシーン、エロ過ぎて勃起しながら爆笑しました!
やっぱ恋愛映画ってヒロインに惚れられるかどうかが好きか嫌いかの分かれ目ですからね。


まぁそんな感じで、しょっちゅう喧嘩もしながらも愛し合う2人の姿にニヤニヤして、それだけに冒頭でも示されている通り、終わりの予感が常に漂っていて一抹の切なさもあり、話が進むにつれどんどんその切なさが増していく......んですが、しかし終盤はかなり意外な展開になって驚きました。
しかしそれこそが本作の1番の美しさでもあり......。

というわけで、以下はネタバレ↓





























はい、ネタバレです。

美しい雨の中でのキスシーンが本作のハッピーパートのクライマックスとなり、その後のパーティーのシーンが地獄のように真っ赤な映像で描かれていくのが凄まじいです。
2人の表情によるやり取りの、これまでと一転して冷え切ってるあたりはヒリヒリと心理的に痛く、さらにはビジュアル的にえげつないゲロまで加わって、忘れ難い厭ぁ〜な一幕になってます。
このいきなり現実から乖離してしまったような映像は、あるいは実際に客観的な現実ではない......エリックの被害妄想による認知の歪みが生じた映像......なのかもしれませんが......。

ともあれ、帰宅して八つ当たりしてあのクソ女ぶっ殺してやる!......という妄想をするに至り、冒頭の殺人シーンの意味がようやく分かります。

見始めたときはてっきり最後にこの冒頭に戻ってきて終わるのかと思ってたんですが、物語はまだまだ続くよ残酷なまでに......。

罵倒、暴力、強姦......最低なんだけど、気持ちは分かるだけにつらい暴走機関車エリックさんの大活躍に胃が痛くなります。
この辺が本作で2番目にしんどいくだりで、あんまり酷いので一旦休憩挟みましたよ。

からの、しかし別れ話が決まってからは一転、凪いだように穏やかな、しかし死にたくなるような切なさも湛えた顔つきの2人に変わります。

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あんなに激しく愛し合った、互いが互いの片割れのような2人にも終わりが訪れてしまう......。
思い出が美しいだけに、別れはより残酷で、あぁ、愛は無常、人生は無情......。



しかし、それでもまだ物語は終わらない。

それから幾星霜(?)の時が流れ、2人は再開するわけですが、オルハの様子がなんかもう全然おかしいっていう、カフェの場面がめちゃくちゃホラーで......。
病に臥せるオルハを見守り続けるエリックの姿にはもうかつての破天荒さはなく、彼女とのつらい別れを乗り越えたことで大人になったことが伺われ、それだけに再会がこんな形になってしまうのが悲しい。
一方のオルハはもうすっかり子供に返ってしまったかのようでそれもまたつらい。2人出会った日に「その赤毛綺麗だね」なんて言われてたのが悲しい伏線となって観客の胸に突き刺さります。
なんというか、普通に都会の病院なんだけど、サナトリウムもののような悲しい美しさがあって、泣いちゃうよ〜。泣いちゃいますよ......。

ラストのあっけないくらいの静かな死と、あの像と、ゴミ収集車に飲み込まれていく鬘と、、、あくまでもドライな描写が逆に悲しみを強調します......。



そんなわけで、冒頭からは想像のつかない場所まで連れてこられて半ば呆然としてしまいますが、激しすぎる恋が終わり、やがて愛に変わっていく様を美しく切り取った、生搾り果汁100%の純愛映画でした。
ヴァーホーベンの作品でもダントツで一番好きだし、ただの変態おじさんじゃなかったのかと見直しました()。