偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

島田荘司『幻肢』感想


医大生の遥は事故で大怪我を負い、記憶を失った。恋人の雅人の安否と事故の原因について思い詰めるあまり鬱状態になった遥はTMS治療を受けることになるが、その結果、雅人の幻が見えるようになり......。

幻肢 (文春文庫)

幻肢 (文春文庫)


正直に単刀直入に言いますと、全然面白くなかったです。

もちろん、島田荘司というデカい名前のせいで変に期待してしまったところはありますが、それを抜きにしてもつまらない......。

一応、脳科学とか医学の知識を下敷きにした恋愛ミステリってことなんですけど、ミステリとしての意外性は皆無だし、恋愛小説としても薄っぺらい。

作中にやたらとスタバとかMIZUcafeとかが出てきて若い子に媚びようとしてる感じが寒いっすね。そのわりに会話文はなんとも不自然というか......うーん。軽いノリの会話文でリアリティを出そうとしてるのかもしれないけど、現実っぽく書いたから小説としてリアリティが出るわけじゃないと思うんですよね。
喋ってる内容も特にあってないようなもので、主人公にすらまるで魅力を感じられません。ましてや、主人公が記憶喪失のせいで回想シーンすら出てこない幻だけの恋人の雅人くんなんか存在感ほぼゼロだし、その他のキャラはまじでただのモブだし、小暮ってなんだったの!?

脳科学についての説明も、そんなに目新しいこと言ってないわりに変にクドくて全然読み進められなかったです。

なんというか、腐っても島田荘司だからドラマとしてはそれなりのレベルを期待してたんですけど......。結局壮大な惚気話でしかないし、感情移入できない人たちの惚気話聞かされてもなぁ。結末とか、あんなんでいいんですかね。あまりにお粗末では。

まぁ、自身初の映画化作品ということで変にキャッチーを目指して失敗したんですかね。ゆってもわりと近作の『写楽』や『アルカトラズ幻想』は面白かったんで、今回はたまたまの失敗作なんだと思うことにしてまた別の作品読んでみます。