偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

三津田信三『わざと忌み家を建てて棲む』感想

『どこの家にも怖いものはいる』に続く幽霊屋敷シリーズ(?)の第2弾です。


三津田信三の元に三間坂から再び持ち込まれたのは、ワケあり物件を継ぎはぎして建てられた「烏合邸」の怪異だった......。


作中でも言及される通りウィンチェスターハウスなんかを彷彿とさせる、しかしそれよりも遥かに悍しい、"幽霊屋敷のキメラ"と呼ぶべき烏合邸の存在感がパネェっす。

1つでもヤバい幽霊屋敷がたくさん寄り集まって1つの家になってる。そのこと自体もヤバいし、そんな家をわざわざ建てる奴の神経が一番ヤバい!
そしてその首謀者が色んな人を烏合邸の各ユニットに住ませてなにが起こるか実験するっていう発想がヤバい!
その実験台になった人々の手記やらなんやらによって構成された、例によって連作短編と長編の間のような構成になっています。


各話とも、単独では結末がよく分からない......という状態にはなっています。
そのため、各話が独立した短編と思って読むとやや物足りなさはあるものの、尻切れトンボの結末も怪談においては不気味ではありますし、長編として組み込まれていくのも考えればこれでいい塩梅なのかな、とも思います。

ただ、長編としての纏まり方が、前作の大胆不敵さに比べるとちょっと弱いかな、という感じはしてしまいますね。
これだけ思わせぶりなわりには、けっこう未解決で投げている部分も多く、著者の普段のホラーミステリを読み慣れているだけにやはり肩透かしな感は否めず。


まぁとはいえいつものメタネタも盛り込まれてたりもして、ファンならがっつり楽しめることは請け合いです。