偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』を読んだ

女の子を本当に好きになったことがない。
もちろん、好きになったことはある。
でも、私が思う"本当"は『きみに読む物語』のラストシーンみたいな、ああいうことなんですよ。
そもそも、私は私のことを好きになるようなセンスのかけらもない人間に魅力を感じない。
一方で、自分を褒めてくれる......いや、少しでも関心を持ってくれる(そして顔の良い)女性がいればもう好きになっちゃう。
「好きの反対は無関心」という言葉は自分に対しても当てはまって、自己愛と自己嫌悪は共に自分への著しい関心という意味で表裏一体。だいたい自信がないやつは自己愛強い。私のように。

穂村の本を読んでいると、内容の9割くらいには「お前は俺か」と思ってしまう。
でも残りの1割で分かりきらないところがある。「あるある。うんうん、わかるわか......わけわかめだわ!」ってな具合で。
そもそも、私と同じような精神構造をしていても、彼はそれを面白おかしく魅せることが出来てエッセイの収入で食ってる。片や私は誰も読んでいないブログをしこしこと更新しては「どうせ誰も読まないのに」とまた落ち込むだけのうんこに過ぎない。

穂村の本を読んでいると、そうやって彼我の差を見せつけられて切ない気持ちになりつつ、そんな感傷に浸ることが嫌なはずなのになぜだかやめられなくて、読み終えてはまた新しいのを買ってきてしまう。


もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫)

もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫)

  • 作者:穂村 弘
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 文庫


本書は特に私にとって関心の強い「恋愛」がテーマなので書かれている内容に一喜一憂しちゃいました。
基本的に書かれている文章のモテない感には共感しつつ、でもそうはいいながらめちゃくちゃたくさん元カノいるやんこいつと醒めた目で見てしまったりも。
解説でも指摘されている通り、穂村さんは「見るからにもてなそう」な自分を面白く演出することでモテを手に入れている卑怯者です。
そして、同病かと思っていたら実は裏切られている私のようなクソ非モテうんこ読者でさえ、彼の魅力から逃れることはできないから恐ろしいですね。

あ、本書の中では「コンビニ買い出し愛」が特に好きでした。身の回りの顔の良い女全員へのルートをとりあえず確保してある感じ、めちゃくちゃわかる。