偽物の映画館

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浦賀和宏『さよなら純菜 そして不死の怪物』読書感想文


純菜を失った八木剛士には、もはや恐れるものは何もない。謎のスナイパー、チラシ配り姉ちゃんとの戦いで自信をつけ、目指すはクラスの連中皆殺し!!

さよなら純菜 そして、不死の怪物 (講談社ノベルス)

さよなら純菜 そして、不死の怪物 (講談社ノベルス)

ジャスコで買っちゃった武器を手に持ち
198円
全員殺せ


さて、詳しくは触れませんが前作で純菜の愛を失った八木剛士くん。
本作では過去最大にうじうじと悩みます。一冊の中でさえ同じような鬱屈語りが何度も繰り返され、人によっては読んでてうんざりするかもしれませんが私はこれすごい好きです。だって悩んでる時なんて同じ愚痴を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も頭の中で繰り返してしまうものですよね。それをある種身も蓋もなくリアルに描くならばこうなりますからね。このうじうじうだうだぐだぐだこそが俺たちの青春さ。そうだろ?

各章題で「○○大作戦」と称して八木くんがいろいろなチャレンジをしていくので結構内容はてんこ盛りなはずではあるんですが、とにかく鬱屈一人称が通底しているせいでほとんど話が動いて感じられない......などと言うともはやディスってますが、それが面白い。チラシ配り姉ちゃんはちょっと可哀想だけど......。

そして、クライマックスになると、急にブラックホール並みの吸引力で読者を引き付けてきます。暴走機関車八木剛士。
なんというか、このシーンはPOVみたいに剛士の目を通して映像が見えるような読書体験でしたね。あるいは、それは私も中学生の頃に思い描いた光景だから......かもしれませんが。

そして、あそこで終わるのはずるい。
先がきになる。
と思いきや、次巻は一旦八木パートから離れるらしく、そのままこの先が読めるわけではないらしい。ずるい。