偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

2019年、私的アルバムランキング!!!

はい、それでは小説ランキングに続いて今年のアルバムランキングです。
小説の方は今年読んだものでしたが、こちらは今年リリースされた作品を対象にやっておりますのでよろしく。


今年は、個人的に好きなバンド四天王がみんなアルバムを出すという個人的に記録的大豊作の年でした。なので1位から4位はその4枚になります。なんとつまらないランキング!!

また、今まではいわゆる邦ロックの範疇の音楽をよく聴いていたんですが、今年はApple Musicの力で海外の音楽もちょいちょいつまんだので、番外編として今年聴いた洋楽特集も挟んでいきたいと思います。

ではまずは今年リリースの日本のアルバムベスト10位から5位までを発表するぜ!




10位 筋肉少女帯「LOVE」

はい、昨年は1位に推した筋少ですが今年はこの辺で。筋少ってめちゃくちゃハマる時期とそこまでな時期があって、去年はちょうどバチッとハマっちゃってたんですよねえ。今年は自分のHPとMPが少なかったのでちょっと暑苦しく感じました。←

とはいえ、やっぱりめちゃくちゃ良かったっすわ。
前作は30周年記念ということでかなり集大成的にあれこれ詰まっていましたが、今回もその路線。人生、恋愛、セックス、そしてオカルトや映画などなど......。
しかし、最初の曲と最後の曲で「LOVE」という言葉をフィーチャーしているので全体の印象はタイトル通り"愛"のアルバムって感じでした。

一番好きな人とは 結ばれないのさ

という言葉ではじまるこのアルバムでは、愛の不思議や叶わぬ恋について歌われます。
そして、最後の曲に至って、"Falling out of love"という答えが提示され、恋に苦しんできた僕らは無情の救いを手に入れるのです。
......というふうに、締めの曲があるのでバラエティ豊かなのに全体がまとまって見える楽しい名盤です。




9位 GRAPEVINE「ALL THE LIGHT」

ALL THE LIGHT (初回限定盤:CD + DVD)

ALL THE LIGHT (初回限定盤:CD + DVD)

めちゃくちゃ好きってわけじゃないつもりでいつつも、アルバムが出るたびになんだかんだ買っちゃうGRAPEVINEの16枚目です。

バインの近作はわりと清澄な雰囲気のアルバムが多かったですが、今作はやや地に足がついた印象といいますか。
それはたぶん、最近のアルバムがアレンジ抑えめでバンドの音メインの引き算的なサウンドだったのに対して本作は一聴して印象に残るような個性的なアレンジの曲が多いからなのかなぁと思います。
例えば一曲目なんかアカペラだし、二曲目はホーンが入ってたり、他にもポンゴみたいな音のとかエレキギターの弾語りっぽいのまで、クセの強い曲ばっか。
だから10曲入りの短めなアルバムだけど、実験的でありながらもキャッチーで聴きやすく、けっこうな満足感もあります。

そして、歌詞がわりとストレート。
それが特に表れているのは表題曲でもある最後の曲「すべてのありふれた光」

ありふれた未来がまた
忘れるだけの 忘れるための
それは違う

っていう、お、どうしたん?くらいな前向きさ。
それがでも、もちろん押し付けがましくはなくて、「決意」とかいうほど気負ってもいなくて、ただおっちゃんたちが気楽にオールライトと言ってくれているような心地よい暖かみがあって、う〜ん、名盤です。




8位 ギリシャラブ「悪夢へようこそ!」

悪夢へようこそ!

悪夢へようこそ!

  • アーティスト:ギリシャラブ
  • 出版社/メーカー: JESUS RECORDS / sputniklab inc.
  • 発売日: 2019/04/03
  • メディア: CD

ほとんどまだ聴けてないバンドなんですが、志磨遼平が彼らの「からだだけの愛」という曲のMVをツイートしてたのがきっかけでその曲と、その後出たこのアルバムだけ聴きました。
なんで、あんまこのバンドについては分かんないけど、少なくともこのアルバムはめちゃよかった。
色んなジャンルを取り入れつつ退廃的な雰囲気や倦怠感は通底していつつ、しかしポップでキャッチーで中毒性が高いってゆう。
歌詞も、視点は独特の尖がありつつ使われる言葉は平易で分かりやすいもの。それだけに想像力が刺激されるし聴いてて気持ちが良いですね。
10曲で30分という短さもいいですね。腹八分目くらいだから、残りの二分くらいで余韻に浸れる。

あんまり聴いたことなかったバンドですが、過去作も聞いてみたいと思うくらいには名盤です。




7位 ミツメ「Ghosts」

Ghosts

Ghosts

ミツメ もあんまり今まで聴いたことなかったけど、「エスパー」という曲がちょいバズってて聴いてみたらもう理想の音楽という他ないくらい、どタイプな曲でした。
なので、そんなエスパーが収録されてる本作を聴いたんですが、めちゃくちゃ良い。

アルバムタイトルは『Ghosts』。
テーマは"不在感"だというこのアルバム。
音的にも、引き算の美学みたいな音数少なめで作った上にそれこそ幽霊でも出そうなシンセの音とかをぽわ〜んと乗せてたりして、全体になんとも茫洋とした印象が漂います。
なんというか、一生懸命のめり込んで聴こうとしても耳をすり抜けていくような、それでいてなぜだか無性に頭にこびりついてまた聴きたくなるような、不思議な中毒性があります。

そして、歌詞についても掴みどころのない良さがあります。
単語レベルで言うなら、ノスタルジー、不在、不気味さ、SF感、といったところですかね。

ノスタルジー
例えば、エスパーの

長く伸びた影 暗くなるまでにそうかからないね 耳打ちして

といった風景描写だったりもそうだし、あるいは終盤の3曲は特にだけど時の流れというテーマがアルバム全体に通底していて、戻れない時間や、あったかもしれない時間というものを目の前にただすっと置かれるように静かに胸を締め付けられます。

また、個人的に好きな曲でありアルバムのリード曲でもある「なめらかな日々」という曲の

なめらかな日々取り戻して
悪いことはない けれどどこか
あなたがいない それ以上のなにか

という歌詞の、言葉にできない不在の輪郭をなぞることで言葉として描き出すようなセンスがエグい。

そして、日常の風景を描いた歌詞の中にふいに「エスパー」や「不時着した船」といったSFっぽいワードが飛び出すことで、どこでもなくいつでもないのに確かに見覚えを感じる、この世には不在の時空へと旅する心地になれます。

なんとも上手く言い表せないですが、とにかく一つ言えるのは、これは名盤です。




6位 KIRINJI「cherish」

cherish(通常盤)

cherish(通常盤)

  • アーティスト:KIRINJI
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: CD

いやもう、キリンジの新作に対して特に言うこともねえわ。
前作「愛をあるだけ、すべて」の路線を引き継いだ生音と機械で作った音の融合みたいなサウンドが気持ちよすぎて、あまりにも気持ちよすぎて、もはや強制的に踊らされます。これはもう音の暴行罪で訴えてもいいのでは?
なんてクソみたいな感想しか出てこないくらい最高です。
歌詞も詩的なものから哲学的なもの、人生というものをミクロな視点から見つめるものから冗談みたいなのまで色々あって、しかしどれも言葉の選び方が独特でちょっと普通じゃ思いつかない感じ。
とにかく揺れながら聴いてしまう名盤です。




5位 SEKAI NO OWARI「Eye」「Lip」

Eye (初回限定盤)(CD+DVD)

Eye (初回限定盤)(CD+DVD)

Lip (初回限定盤)(CD+DVD)

Lip (初回限定盤)(CD+DVD)

セカオワもうアルバム出すの辞めたのかなってくらいにシングルばっかでアルバム出してなかったですが、出すとなれば二枚組!
正直これまでセカオワはそこそこ聴くくらいで、別に「待望のアルバム」ってほど待望してたわけでもないけど、いざ聴いてみたらガツンとやられました。

「eye」はセカオワのダークサイドを、「rip」はポップサイドをそれぞれ表す、みたいなコンセプトではありつつ、表裏一体とでも言いますか、両者の違いはかなり曖昧で「これはeyeじゃなくてripに入れるの?」(またはその逆)という曲もいくつかあり、2枚合わせて1つの作品という印象です。
そんな表裏一体の印象を裏付けるように、各盤の4曲目の「夜桜」と「向日葵」は同じメロディを歌詞とアレンジで対にしているなんていう仕掛けになってたりもします。

だから、聴く前はてっきり「どうせ『eye』のが好きだろうな」と思ってた捻くれ者の私でもどっちも甲乙つけ難く、セットで聴いてしまっています。

で、正直に告白すると今までセカオワの変なPOP感とかファンタジー的世界観のことをちょっとダサいと思ってたんですが、本作はかなりアダルティに脱皮してて驚きでした。
それが特に出てるのが「rip」1曲目の「YOKOHAMA Blues」で、めちゃエロい歌声からはじまりめちゃエロい歌詞とめちゃエロい演奏で「セカオワなのにエロい!!!」と心の中で3連エクスクラメーションしてしまうくらいのイメチェン曲。

他にも「ホニャホニャもヤってみたいし、ホニャホニャにホニャホニャをぶっかけたいな」というド下ネタをポップサイドの「rip」で言っちゃうクレイジーさとか、大好きです。

他にも個別に色々書いてたらえらい長文になっちゃうので最後にお気に入りの曲を発表しとくと、「eye」からは皮肉効きすぎでバッチシなタイトルの「LOVE SONG」とオトナな音の「ドッペルゲンガー」。「rip」からは前述の横浜ブルースと、どう考えてもダークサイドな「missing」ですね。

ともあれ、13曲ずつも入ってる大満足な2枚組の名盤たちです。





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というわけで、10位から5位でした〜。

さて、今年の名盤トップ4改め、好きなバンド四天王を発表する前に、今年聴いた海外の音楽でお気に入りのものを一言ずつ紹介しておきます。




girl in red「chapter1」「chapter2」

chapter 1

chapter 1

  • 発売日: 2018/12/21
  • メディア: MP3 ダウンロード
chapter 2 [Explicit]

chapter 2 [Explicit]

  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: MP3 ダウンロード

どっかの国の、ギター弾きながら歌うシンガーの女の子。
夏の暑い日とかにぐだ〜っとバテながら聴くのに最適ないい意味でタルいサウンドがクセになります。ほとんどこの2枚のEPしかでてないので今後に期待。



erlend oye「Legao」

Legao

Legao

  • アーティスト:Erlend Oye
  • 出版社/メーカー: Bubbles Records
  • 発売日: 2014/10/14
  • メディア: CD

The Whitest Boy Aliveが大好きなのですがソロは聴いてなかったので聴いたらもう最高でしたわ。夏の気怠い日に聴くもよし、冬の寒さをしのぐために聴くもよしなあったかくやわらかいアルバム。
あと、久しぶりの新曲「Paradiso」もめっちゃ良かった。



kakkmaddafakka「Diplomacy」

DIPLOMACY

DIPLOMACY

  • アーティスト:KAKKMADDAFAKKA
  • 出版社/メーカー: RIMEOUT RECORDINGS
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: CD

This is The Summer!!! Yeah!!! Fuck'n Summer!!!



Claire Laffut「Mojo

Mojo - EP

Mojo - EP

  • 発売日: 2018/11/09
  • メディア: MP3 ダウンロード

もはやどこの国の誰なのかもよく知らんけどたまたま表題曲聴いて良かったのでハマりました。こんな出会いがあるのもApple Musicならでは(回し者)。
気怠く踊れて声が良い。夕方に聴きたい音楽です。



The Marias「Superclean,vol1」「同vol2」

Superclean, Vol. I

Superclean, Vol. I

  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: MP3 ダウンロード
Superclean, Vol. II

Superclean, Vol. II

  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: MP3 ダウンロード

懐かしげな倦怠感のあるファンクとかソウルっぽいサウンドに、めちゃくちゃえっちなお姉さんの歌声で昇天してしまいそうになるヤバいバンド。MVを観るとヴォーカルのお姉さんはビジュアルもセクシーでやられちゃいました。






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それでは、続きましてついに好きなバンドベスト4の発表です!(違)




4位 ドレスコーズ「ジャズ」

ジャズ【通常盤】

ジャズ【通常盤】

前作『平凡』でえげつねえコンセプトを組み上げ、これをアップデートするのも難しいのではないかと心配しましたが、それも杞憂。

今作は「世界で最後の音楽」というコンセプトのもと、人類の滅びが描かれます。

それは、近未来に起こる核戦争による世界の終わりの話のようでもあり、現生人類が滅亡した後の新人類に向けての僕らからのメッセージのようでもあり、逆に新人類が僕ら現生人類の化石を見つけたレポートのようでもあり、そしてまさに今この令和元年という時代を描いたノンフィクションでもある。要するにヤバヤバのヤバなコンセプトアルバムです。
「ジャズ」というタイトルですが、サウンドはいわゆる音楽ジャンルのジャズっぽいわけでもなく、私にはちんぷんかんぷんですがどうやらロマ音楽などを取り入れているらしいです。とはいえ、それをちゃんとキャッチーなJ POPの音に落とし込んでもいて、あんまり聴いたことない音なのにすんなり入ってきます。
語り出すと長くなるのでこのへんにしますが、「美しく儚い退廃」を現代のリアルな文脈の上に描き出した名盤です。




3位 indigo la End「濡れゆく私小説

濡れゆく私小説(通常盤)

濡れゆく私小説(通常盤)

こないだこのアルバムのツアーにも行ってきたけどめちゃ良かったです。
おそらくいずれアルバム感想を書くのでここではざっくりにしときます。
1曲目と2曲目がそれぞれユーミン山下達郎へのオマージュだったりする、歌謡曲テイストを濃くしたアルバム。一方、後半からは特に近作に見られる実験的なサウンドも先鋭化していて、新旧のインディゴの集大成的な1枚。
歌詞に関しては、『幸せが溢れたら』以来の日本語の文章の形をしたアルバムタイトルにも表れているように「失恋」がテーマの物語性の強い歌詞が集まってます。しかし、その描き方はより深く、複雑に、ゆったらめんどくさいくらいの繊細な心理描写になっていて、"『幸せが溢れたら』のアップデート"、もしくは"オトナの『幸せが溢れたら』"と言っても良いでしょう。
ミッドなナイトに藍色になってしまう名盤です。




2位 サカナクション「834.194」

834.194

834.194

  • 発売日: 2019/06/19
  • メディア: MP3 ダウンロード

http://reza8823.hatenablog.com/entry/2019/06/29/111536

http://reza8823.hatenablog.com/entry/2019/08/20/215959

6年ぶりの2枚組みアルバムで、サカナクション の、いや、山口一郎の半生を綴ったドキュメンタリー的コンセプトアルバム。

もはや文章書くのに疲れてきたので前書いた感想のリンクを貼って終わりにしときますが名盤です。




1位 スピッツ「見っけ」

見っけ(初回限定盤)(SHM-CD+DVD付)

見っけ(初回限定盤)(SHM-CD+DVD付)

もはや出来レースも大概にしろよってくらいにあらかじめ決められていた今年の1位はスピッツです!
このランキング、毎年やってたら3年に一回は1位がスピッツというクソみたいな結果になるんですかね。恐ろしい......。

内容について。

『とげまる』あたりから「ファンに向けて」とか「バンド自体のこと」を歌っていそうな歌詞が目立ってきたスピッツですが、中でも前作『醒めない』と、その後に出たシングルコレクションに収録の新曲「1987→」ではモロにスピッツというバンド自身のことを歌うようになりました。
そんな、いわばメタ・スピッツへ生まれ変わったスピッツの第2歩目が本作。

「醒めない」どころか更に「見っけ」ていくぜ!という強すぎる宣言を歌う表題曲から始まり、スピッツ第四の国民的ソング「優しいあの子」、そしてロックンロールの"高熱"をぶちまけるかのように短めの演奏時間でシンプルでストレートな曲が並ぶ様はもはやクロマニヨンズみたい。
どの曲も物語性が非常に強く、短編集や童話集を読んでいるみたいな心地で聴けるアルバムです。

そんなアツくエモい展開が、(スピッツにしては)壮大なプログレ組曲「まがった僕のしっぽ」でクライマックスを迎えた後に、「初夏の日」で夢の余韻に浸りながらも現実に優しく帰してくれます。
しかし、ファンタジーの世界から現実世界へのお土産のように、最後の曲「ヤマブキ」は圧倒的な爽やかでストレートで捻くれてるけど前向き!!ジャーンというライブの終わりみたいなアルバムの終わり方をして、かつてないくらいにリスナーに寄り添ってくれる、そんな一枚通して聴く醍醐味に満ちた名盤オブ・ザ・イヤーです!!!!!!!!!!!!!
まぁ、いずれアルバム感想を書きますよ......。






といったわけでございまして、長くなりましたが今年の名盤ベスト10ぷらすあるふぁでした。
今年もやはり音楽が楽しかったわ。来年は早くもベボベの新作というお楽しみトピックが待ち受けているので引き続き音楽を楽しんで行きますよ!
んじゃ、ばいちゃ!!