偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

やみよいくよ。

サカナクションの6年ぶりのアルバムが出た。
4月に発売決定と発表されてからさらに延期したことに対して根に持ってるから言わせてもらうと、正確には6年3ヶ月ぶり、のアルバムだ。

6年と3ヶ月前、2013年の3月。
私は高校を卒業して大学に入る直前の、最も輝かしい時期であった。
そんな時に聴いた前作『sakanaction』は、大学生になって好き勝手に夜更かし出来るようになったことも相まって私の夜のお供になった。
大学生の4年間、サカナクションの新作を待ち続けた。ラジオで山口一郎が次なるアルバムの話をするたびに胸をときめかせていた。本当に、それは恋と同じであった。
しかしどんなに恋い焦がれてもサカナクションの新作という思いびとは振り向いてくれない。

そんな折、個人的に色々とあって、社会人になってすぐに、もうサカナクションのことは忘れようと思った。
CDもDVDも売り払い、iPodからもサカナクションの曲は消した。

それからsyrup16gとか聴きながら死にたい死にたい言ってたもののなんやかんやでけろっと立ち直ってまたサカナクションを聴けるようになったけど、一度醒めてしまった気持ちはもう戻らない。一時はスピッツと並んで一番好きなバンドだと公言していたものの、もはや単にたくさんある好きなバンドの一つに成り下がってしまった。そう思っていた。

忘れていた。
忘れかけていただけか。

そう、思い出したんです。
新作が出ると発表された時、収録曲目が出た時、新曲が解禁された時、そして、今日、新作を通しで聴いて。
あの頃のサカナクションへの恋心を思い出したんです。

正直、聴く前は既発曲の寄せ集めのアルバムなんか作りやがってクソがと思ってました。
それが実際聴いてみたら、既発曲がまるでこの作品のために書き下ろしたかのように、ぴったりと一つの大きな物語として再構築されている。そして、新曲たちは今までよりグッと大人っぽさを増して6年という月日を感じさせる。
アルバムの全てがディスク2のラストのセプテンバーという曲に収斂して、聴き終えた時には興奮で意味もなく部屋の中をぐるぐる歩き回ったり意味もなくストレッチをしたりしてしまいました。

いずれちゃんと感想を書きたいという気持ちと、ここまでの破格の作品の感想なんて書けないという諦めのアンビバレンツに引き裂かれつつ、とりあえずせっかくだし発売日の今日に一言書いとこうと思い立って書きました。発売日は明日ですけど。特に意味のない個人的は呟きですけど。でもやっぱり私はサカナクションに身も心も捧げてしまっていたんだと思い知らされてしまったんです。サカナクションの曲になりたい。サカナクションの曲としてスピーカーから鳴りたい。