偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜(2019.1)

今月は『ミスターガラス』『サスペリア』という、今年楽しみにしてた二大映画を観に行ってしまったので、旧作はそんなに観れてないです。
この二つもいずれ感想書きたいと思いつつなかなか難しいもんですね......特に『サスペリア』まじわけわかめだったからな......。
というわけで今月のふぇいばりっとがこちら〜。





お熱いのがお好き
リバディ・バランスを射った男
ストレンジャー・ザン・パラダイス
ソナチネ



お熱いのがお好き

ひょんなことからマフィアに追われることになった楽団員のジョーとジェリーは、身を隠すために女装して女性楽団に入ることにする。そこで2人はシュガーという絶世の超絶セクシー世界一美女(※個人の思い入れです)に出会い......。


マリリン!最高!
これはもうあかんでしょ。完全に恋に落ちましたよ。
今までマリリン写真でしか観たことなかったので、「別にそんな可愛くなくない?」と思ってましたが、動くと可愛すぎる......。この笑顔が素敵ですよね。幸せそうな、でも憂いの香りもする......というのは彼女がマリリン・モンローであること自体に私が勝手に投影してしまう憂いなのかもしれませんが、とにかく一種異様の魅力を湛えたその笑顔に私のハートはぐっちゃぐちゃのぎっとぎとですよ。はぁ、、、
あと、たぶん、特にこの作品の時の髪型がヤバいんですよね。割と晩年ですが、髪型で若く見える。色っぽい美人なんだけど、少女のような可憐さもある。
そして、キスシーンのあの寂しそうなこと、嬉しそうなこと、、、はぁ、、、
彼女のことを考えるとついついため息が出ちゃうんですよね。これってもしかして......///

はい、そんな感じでマリリンめちゃかわな映画でした。みんな観てね!



......っておい!
実はこのレビュー始まって以来マリリンの可愛さについてしか書いていないことに気づいたので、そろそろ内容についても書きます。
ブコメだと思ってたらオープニングから序盤そこそこかけてマフィアに追われるサスペンスで「あれ?」と思いましたが、ラブコメでもだるだるの甘甘にせずにこういう引き締めを入れてくるエンタメ極道というのがビリー・ワイルダー大先生なのですよね。彼の映画を見るのはこれで5本目ですが、全部最高にエンタメしてて最高にただただ面白いですからね。要は最高。

サスペンスから一転して女装してバレないように女の園に忍び込むという全男子憧れの最強シチュエーションをぶち込んできてしっかり脚フェチ映像を入れてくるあたりもさすがですよ。ここからはコメディ色を強めに、でもマリリン演じるシュガーという女の子の抱える憂いという文芸的な香気も隠し味で入っているのもおしゃれ。色々起きてドタバタしつつも「逃走」「恋」という2つの軸はブレないから何が起きても安心して見られる親切設計。ラストもスカッと胸のすく痛快なThe End!
もうね、私が金田一京助なら国語辞典の「エンターテイメント」の項に「ビリー・ワイルダーのことである」と書きたいくらい面白いです。
面白すぎてもはや面白いとしかかけませんけど、ベタ甘だけどホロ苦な大人のスイーツみたいな名作ですよ。あとマリリン可愛いサイコーYeah!




リバディ・バランスを射った男

リバティ・バランスを射った男 [DVD]

リバティ・バランスを射った男 [DVD]


西部劇でありながら社会派ミステリというなかなか斬新な映画でした。


3人の男が登場します。
銃と暴力が"法"である西部の町に、法律による秩序を齎したいと願う、若き弁護士のランス。
銃の名手で、暴力によってやりたい放題の悪事を働く悪党リバティ・バランス。
そして、牧場主でありながらリバティと互角の腕を持つ銃の名手であるトム。

冒頭、上院議員になったランスがトムの葬儀のために町へ戻ってきて、そこで過去を回想する......という体で物語がはじまります。
タイトルの「リバティ・バランスを射った男」が誰のことなのか分からないままお話が進んでいくので、その大きな謎が観客を惹きつけます。

そして、3人の関係性がすごく良い。
ランスとトムはそれぞれ法と銃を武器にするヒーローであり、一方でトムとバランスは共に西部劇の時代の象徴でもある。
正反対のランスとバランスの間に、トムという人物が入ることで、ただの勧善懲悪ではない深みが立ち現れます。

また、脇役もそれぞれ魅力的で、出てくる人物全員に愛着が湧く映画でしたね。そういうの好きだからね。みんな好きですよね?

一つの時代が終わっていき、もっと良い時代が来ることへの希望。そして、それでいながら終わるということ自体の切なさや寂寥も感じられる名作でした。

なんせ、脚本とテーマとキャラが今見ても色褪せず良いもんですから、西部劇に馴染みがなくても全然面白かったです。




ストレンジャー・ザン・パラダイス

ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]

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退屈もここまで極まると面白いですね。

定職につかずにギャンブルなどで稼いで何にも縛られず生きる主人公のウィリーと相棒のエディ。ある日、ウィリーの従妹のエヴァを一時的にウィリーの家で預かることになり......。


「新世界」「一年後」「パラダイス」という、30分ずつの3つの章を連ねた90分映画でして、カメラの動きはかなり少なく、ワンカットごとに暗転を挟むという変わった撮り方が特徴です。映像というより、動いてはいるけど漫画やボラギノールのCMみたいな雰囲気ですね。

で、とにかく何も起きない。日常。
その日暮らしの男たちといえば暴力沙汰や麻薬取引なんかが出てきそうですが、出ない。従妹の可愛い女の子を家に泊めたら一夜の過ちなんかありそうですが、ない。
とにかく、出会って、くだらないことを話して、別れて、再開して、というそう特別でもないことが淡々と描かれていくのみ。
じゃあつまらないのかというとそうでもなくて、退屈だけど面白いんですよね、これが。
なんせ短い章が連なっていて、それぞれ舞台が変わるので長編だけど連作短編のような気楽さで観れますからね。
また、日常とは言っても、主人公たちはヒッピー?っていうのか分かんないけど、働かずに生きてる人たちなので、その日常自体が我々サラリーマンの毎日とは一線を画していて面白いんですよね。彼らにゃ会社も仕事もなんにもないげげげのげな生活ですからね。
で、途中で工場労働者をバカにするシーンが出てくるんですね。これが働いている身からすればなかなか腹立つんですけど、それもまた憧れの裏返しですからねぇ。なかなか憎たらしい映画です。

最後もちょっとした事件は起こるものの、さらっと終わってしまいますが、ここに何とも言えない切なさと愛おしさがじわじわと滲み出てくるんですよねぇ。説明がないからこそ、勝手に自分の解釈をぶち込める余白もあって、その余白に私は自分にも分かりやすいあんな感情を当てはめてみたりして遊びました。あんま書くとネタバレ(って話でもないけど一応)になるので伏せますがね。

そんな感じで、ゆったりとした退屈な面白さを味わえる贅沢な逸品でした。
あと関係ないけどパターソンにカーラ・ヘイワードちゃんが出てるらしいからあれも観たいですね。




ソナチネ

北野映画といえば、私のイメージだとこれか最近なら「アウトレイジ」。たぶん世間的にもそうであろう、北野武監督の代表作の一つです。
10月43ナントカ(タイトル覚えれない)の沖縄パートを気に入った監督が、そのまま全編沖縄パートで作った作品とも言われています。


うん、まぁ感想はうまく書けないけど好きです。
オープニングがエグいっすね。ナポレオンフィッシュとかいう変な魚が食人族のジャケみたいに串刺しになってる画像が久石譲の不気味に美しい音楽に乗せて出てくる、このなんとも言えないヤバみ。
内容もヤバみですね。ヤクザの世界。一触即発の殺し合いは、退屈な日常と隣り合わせにある。いわばヤクザの世界のゆるふわ日常コメディですよね。

沖縄出張。絶対みんな死ぬだろってことは武映画だから最初から分かってるんだけど、そのわりにゆるい。全編にわたって嵐の前の静けさのような、それとも死の前の走馬灯のような雰囲気が漂います。
相撲したり落とし穴で遊んだり、みんなおっさんであることを除けば小学生の夏休みそのもの。人生の無意味さというか、儚さというか。
それでも、「あんまり死ぬのが怖いとな、死にたくなっちゃうんだよHAHAHA」というセリフが象徴する死というものの恐ろしい存在感。たぶんこの映画の主人公は死ですよね。深淵さんと同じで、死も正面から覗き込もうとすると、こちらも見つかってしまうものなのかもしれません。ひえー。