偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

浦賀和宏『ファントムの夜明け』昔書いたの

私の中ではここ数年恒常的に浦賀和宏ブームが起こっています。そのためブログを始める前に書いてた浦賀作品の感想をこっちに移して来ようかと思います。

ファントムの夜明け (幻冬舎文庫)

ファントムの夜明け (幻冬舎文庫)



なんなんだこれは......。
ジャンル分けするならSF恋愛ミステリーでしょうか。ただ、とりあえずミステリらしいミステリではないです。いかにも仕掛けがありそうなあらすじのわりに、浦賀作品に期待するようなどんでん返しなどは期待しない方がいい作品です。でもこれがべらぼうに面白いんですよね。あらすじを説明するのも難しいですが、一年前に別れた恋人が行方不明になったことを知った主人公は、それから徐々に幼い頃に死んだ双子の妹の"とある能力"が自分の中でも発現していくのに気付く......という話です。
意外な真相やどんでん返しこそないものの、過去に何が起こったのか?これから何が起こるのか?という謎の興味で引っ張っていくところはミステリーです。
そして、主人公が別れた恋 人への未練を引きずる暗い恋愛小説でもあります。彼はもう自分のものじゃないのにことあるたびに今カノに嫉妬したり優越感に浸ったりしながらそんな自分を嫌っている主人公には共感してばかり。
その他にも、ホラー的な描写もあり、超能力もののSFファンタジーでもあり、そして......そう、これはM・ナイト・シャマランの某作(ネタバレってほどじゃないけど一応伏せます)へのオマージュでもある、そんな多ジャンルごった煮のヘンテコな展開を300ページそこそこの短さに詰め込んであるので面白すぎて一気読みしました。しかし社会人になったので徹夜で本を読むと翌日がつらいですね。社会人に浦賀作品は危険です......。