偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

「ドント・ブリーズ」My Favorite ホラー映画10選その1


ホラー10選、一本目はこちら!



まぁ最初なんで最近のけっこう流行ったやつを入れてみました。

近所に住んでる盲目の老人が大金を隠し持っているらしい。噂を聞いた主人公は、クソ親から逃げ出すために彼氏とその友人の3人で老人宅へ強盗に入ることにする。
しかし、元軍人の老人は超人的な聴覚と凶暴さを持ったヤベェ奴だった......というお話です。

ホラー映画の「怖さ」って大きく分けると物理的怖さ心理的怖さの二種類があると思います。
物理的というのはスプラッタなどのグロや、殺人鬼が追いかけてくるハラハラ感など。心理的というのはいわゆる「人間が怖い」系ですね。
で、本作は、この両方を高いレベルで満たしてくれるめっちゃ怖いホラー映画なのです!!!

まず前半では主人公たちが老人の家に侵入するも思わぬ反撃に遭います。
観る前はあらすじだけ聞いて「いや、ゆーても民家でしょ?w余裕で逃げれるやろw」などと思っていましたが、ジジイなめてた!侵入者の存在を察知するや圧倒的筋肉でぶちのめし即、蝿も逃さぬ完璧な施錠を遂行するジジイに主人公戦慄、観客も戦慄。
よくホラー映画で「今逃げろよ!」とトロい主人公にイライラすることがありますが、これはもうジジイが強すぎてしゃあない。観念して殺されるしかねえべ......。
とまぁ、ここまで息を潜めて静かにしていたところにこの急発進で一気に心臓を掴まれます。
そして、心臓を掴まれてしまえばあとはこの作品の思うがまま。緩急の激しいカメラワークと「音を立ててはいけない」という音の使い方で、観ている我々まで既にドント・ブリーズ
このハラハラ感の物理的な怖さだけでも凡百のホラー映画ではありそうでないクオリティなのですが......。


加えて本作は心理的に怖がらせるのも嫌らしいほど巧妙です。
まずは、キャラへの感情移入のしづらさがポイントですね。
映画って多くは主人公なり誰かしらにどっぷり感情移入して観るように作られているものが多いと思います。あるいは誰にも全く感情移入出来ないものもありますね。しかし、本作の場合はそこの不安定さが絶妙で......。
主人公には切羽詰まった事情があり、そこには同情すべきなのですが、とはいえ犯罪は犯罪で、どうにも感情移入しそうでしないような微妙なバランス。一方のジジイも、盗みに入られた被害者ではありながら、助けを呼ぶでも賊を追い払うでもなく閉じ込めたりなんかして殺る気マンマン。「泥棒なんかやっつけちゃえー」「いやでもこのジジイ泥棒どころじゃないやべえ奴なのでは???」というこちらも微妙なカンジ。
結果的に、観客は、とりあえず視点キャラである主人公目線で逃げなきゃと思いつつも内心どっちを応援していいのか分からない不安定さを抱えたまま映画を見る羽目になり、この不安定な気持ちを前述のハラハラ感がガシガシと揺さぶってくるのです。そりゃ怖い。
加えて、後半ではとっても厭〜〜な「人間が怖い」場面があります。これは詳しく書くと興を削いでしまうので実際に見ていただきたいところですが、一つ言えるのは家族とは絶対に、また恋人とも相手によっては一緒に観ない方がいいです。それだけは約束してください。じゃないと隠してたエロ本を親に見られる気持ちを味わうことになります。気まずさで意味もなく水を飲んだり髪の毛をいじったりしたくなります。

が、ともあれハラハラするサスペンスホラーとしても、嫌な感じのサイコホラーとしてもハイレベルです。
上映時間は88分と短いですが、体感140分くらい疲れる、でも満腹感も凄い作品なので、休みの前日とかに出来るだけ暗い部屋でデカイ画面で没入することをオススメします。