面白いけど好きじゃない映画、面白くないけど好きな映画、あります。面白くない上に嫌いだけど心に刺さる映画もまた......。これは最後のやつでしたね。
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/09/29
- メディア: Blu-ray
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製作年:1963年
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ブリジット・バルドー
主人公は劇作家のポールと元タイピストの妻カミーユの夫婦。彼らの良好に見えた関係が、カミーユの「もう愛してない」という言葉で破綻して行く様を描いた、ゴダールのイメージに反してめちゃくちゃ分かりやすいお話でした。
もちろん、そこに本人役のフリッツ・ラングが撮る『オデュッセイア』を中心とした小難しい会話や美しい映像で空気に眠気成分を混ぜ込んでくるあたりはイメージ通りでしたが、私にはそういう小難しい事は分からないので昼メロチックな部分だけの感想になります悪しからず。
主人公のポールはイケメンで金もそこそこあるけど女心が分かってない一番嫌いなタイプの人でした。時代的にじゃーないかもしれないけど女性蔑視的な言動もイラっときますね。
そんな彼のとある些細な行動がきっかけで一夜にして愛の魔法から覚めてしまうヒロインのカミーユ。美人だけどちょっと怖い、雰囲気的には菜々緒みたいな感じ?な彼女の不機嫌そうな表情を見ているだけで根源的な恐怖が湧き上がってきます。
しかし、本当に怖いのは「アンタなんか軽蔑ヮ!」という彼女の言葉。
「軽蔑」という感情は異次元ですよね。「醒めた」なら再燃する可能性もあるし「嫌い」は好きの鏡像と言われることもありますけんども、ケーベツはネェ。「もうあなたとは関わりません」「もう人間として見ません」という宣言ですからね。
夢の中では何度も軽蔑の眼差しを注がれたけど、もう二度とあんな思いはしたくないです。
しかしポールとカミーユも前日までは表立ってはラブラブ夫婦。きっとカミーユの中に蓄積があって、あの日のポールがラストストローを積んでしまったってことだと思うけど、蓄積なんて目に見えないからね。だから怖い。そしてもはや軽蔑されてしまったポールが「なんでそんなことゆうの??😂」とか言ってももう可愛くない。ますます軽蔑されるだけなのにそんなことも分からないこの男のバカさも怖い。自分はこうなりたくないけどなりそうな気がします。怖いわヤダヤダ。
「非論理が論理に反するのは論理的」
作中で印象的なフレーズです。
恋愛というのは非論理的なもの、そこに論理的な「もう愛していない」理由を探そうとするポールは非論理的ということでしょうか。男って賢いふりしてバカよね、ホント。
ポールのバカさとカミーユの「理由はないという理由のある」軽蔑を描き出す会話のリアルさが怖かったです。
とりあえず、今私が世の中で一番怖いものは好きな人からの軽蔑だと気づかされました。
そして、とりあえず来週からはせっかくの休日にこんな映画を見てバカのくせに哲学的なことで鬱々とするなんてバカなマネはよして明るい映画を見ようと決心しました。