偽物の映画館

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駕籠真太郎『殺殺草紙 大江戸無惨十三苦』感想(は特にない) ※R18

久しぶりに駕籠真太郎読みました。当然のように特に感想もないですけど、まぁせっかく読んだので紹介だけ。

 

有名な怪談、昔話、江戸の風物、はたまた江戸と関係ないものまであらゆる題材を使って描く駕籠真太郎流エログロバカ何でもあり御伽草子連作短編集です。


短編9編に、おまけの4ページ程度のショートショート4編を加えた地獄のような全13話が収録されています。

 

ちなみにどう見ても同じシリーズっぽい『殺殺草紙 大江戸奇想天外』という本もありますが、そちらとは一切繋がりはない別物ですのでご注意......ってかシリーズだと思ってたら騙されたわちくしょう!

 

 

殺殺草紙 大江戸無残十三苦

殺殺草紙 大江戸無残十三苦

 

 

 

 

◯収録作
「岩と伊右衛門
「呪いの舌切り雀」
「惣兵衛のガラカポン」
「四季亭六馬の秘密」
「裁縫無情」
「恐怖のつぎあて地獄」
「史上最大の侵略」
「新たなる夜明け」
「勢辺戸爺さんと檜男」
+ショートショート『殺殺つれづれ草』4編

 

 

 

さて、内容についてですが、まぁいつも通り最低ですよ。

 

前半は普通の短編集です。
ほとんどの話で、まず出オチみたいなネタを一発出しといて爆笑させ、そっからさらにエスカレートさせてちゃぶ台返しみたいなオチで大爆笑させるという黄金パターンを踏襲しています。

 

例えば、舌切り雀のおじいさんの子孫である遊女が主役の「呪いの舌切り雀」
この話では、雀の呪いで舌が体の至るところの穴に移動するようになってしまった主人公の遊女が、舌を性器に移動させ、その超絶テクで指名率ナンバーワンになるという、何とも馬鹿馬鹿しい設定です。

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しかし、彼女はある時大事な舌を失ってしまいます。
困った彼女は自ら雀の舌を切りまくってまた呪いで舌を得ようとします。
この発想もバカバカしいですが、こうして呪いで新しく得た舌はなんと巻尺みたいに出しても出しても出てくるものになってしまいます。

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そして平賀源内先生はそれをバカバカしい"あること"に使う、というオチになります。

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......といった塩梅で、バカな着想を更にエスカレートさせて雪だるま式にバカが巨大化していくストーリー展開は天才的だと思うのです。

 

テーマも女性器、男性器、臓物、人体破壊など限られたもの。なのによくもまぁマンネリ化せず毎度毎度違った奇想が飛び出してくることよ......。

 

しかし、後半になると本書全体を貫くストーリーが立ち上がってきて徐々に長編化していく気配を見せます。
これまでの短編の主要キャラたちがメインを張って江戸を襲う危機に立ち向かう......かと思いきや、もちろんそんなしっかりした話でもなく......。


出オチを積み重ねる作風なので何が起こるか書けないので分かりづらくなってしまいますが、長編化してからはとにかく奇想が広がっては別の奇想が産まれといったように奇想の大繁殖、想像力が制御を失って脈絡もなく暴走していくだけの話になっていきます。


だから、終盤はもはやストーリーの軸なんか一切なく、第8話で特にオチもなく長編化したと思っていた話が終わって、第9話は全く別の短編になるという滅茶苦茶さ。こんなこと他の作家がやったら本を壁にぶつけてからシュレッダーにかけてウサギの餌にでもしますが、駕籠真太郎だから許される。なんせ元から酷いこと前提で酷いのを期待して読んでますからね。ズルいわ。

 

ってわけで、特に感想もないですけど、久々に駕籠真太郎読みましたって話です。いつも通り笑いましたよ。ええ。