偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

失恋の傷口に塩を塗る恋愛映画7選

 

☆まえがき

フラれた時、モテる人ならコメディ映画でも観てすぐにつらさを忘れて次の恋に向かうものでしょう。でもね、私のような異性にモテる要素皆無のゴミクズ野郎は、つらい映画を観たりつらい音楽を聴いたりしていつまでもつらい気分に浸って悦に入ってるわけですよ。実にゴミクズである。

さて、今回はそんなゴミクズな野郎どもにオススメしたい、失恋の傷口に塩を塗る映画7選を紹介したいと思います。Let's 死にたくなろうぜ!
ちなみに普段恋愛映画をあまり観ないのでセレクトはめっちゃベタです。ごめんなさい。

 

 


1.セレンディピティ

 

セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~ [DVD]

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製作年:2001
監督:ピーター・チェルソム

 

 

さて、運命の恋って信じますか?
私みたいな非モテゴミクズ野郎ほどそういうありもしない幻想を追ってしまうものだと思いますが、この映画はそんな運命の恋を描いたベタ甘ロマンティックラブストーリーです。

クリスマス前、デパートに恋人へのプレゼントを買いに来ていたジョナサンとサラは同じ商品に同時に手をふれて出会います。図書館で妄想するやつかよ!クソが!
その場で一度は別れた2人ですが、偶然にも同じ日にまた再開し、一夜限りのデートをします。どんどん惹かれ合う2人ですが、「私たちが本当に運命で結ばれているなら、ここで名前以外のことを知らずに別れてもまた出会えるはずだわ」といって"とある小さすぎるお互いのヒント"だけを残して別れます。
お互いの生活に戻る2人。それぞれ恋人との結婚を考えながらも、あの日の出会いが忘れられず、こっそり運命の相手を探す日々が続きます。そして迎えるハッピーエンドは美しいのでしょう。自分の本当の気持ちに向き合って、最後まで諦めずに運命の人を探し、幸せを手に入れた2人の姿に強者の方々は勇気をもらったり涙を流したりするはずです。

でもね、我々ゴミクズは、わけのわからない運命とかいう戯言のせいで捨てられた元の恋人の立場からこう叫ぶはずです。
「あの女、ぶっ殺す」

 

 


2.エターナル・サンシャイン

 

これは前に書いたので割愛します。詳しくはこちら→エターナル・サンシャイン - 偽物の映画館


つらい恋の記憶を消せるとしたら、どうしますか?という考えたくもない問題提起をしてくるクソ映画です(傑作)。

 

 

 

3.秒速5センチメートル

 

 

秒速5センチメートル

秒速5センチメートル

 

 

製作年:2007
監督:新海誠

 

君の名は。」以前の新海誠の代表作です。
こじらせてるくせになんだかんだめちゃモテ野郎のこじれた恋愛模様を観せられて気持ち悪いのと、でも中高生の時にあんなこと経験したかったわ〜という強烈な嫉妬とか、あとなんか映像が綺麗すぎてよく分からないけど死にたい気持ちになったりとか、とにかく自分がどうしてこんなにつらいのかは上手く把握できないままつらさだけをぶち込まれる不愉快な映画です。

 

 


4.ブルー・バレンタイン

 

 

ブルーバレンタイン

ブルーバレンタイン

 

 

製作年:2010
監督:デレク・シアンフランス

嫌な恋愛映画の代名詞みたいな作品です。

倦怠期真っ只中のディーンとシンディの夫婦が離婚するまでの丸1日と、彼らが出会って結婚するまでの幸せな日々を交互に描いているのが素晴らしい(嫌らしい)ところです。

 

幸せ期を見ていることで、「これが後に倦怠期になってしまうのだなぁ」という強烈な無常観に襲われます。幸せ期ではお互いの好きだったところが、倦怠期ではすれ違いのタネでしかなかったりするのもしんどいですね。
それと同時に、倦怠期を見ていることで、幸せ期に描かれる些細な価値観の違いに対して「こんな風だから最初からダメだったんだ......」というしんどさも同時に味わわされます。

そう、プラスとマイナスを掛け合わせても、マイナスの絶対値が大きくなるだけなのです。プラス(幸せ)とはなんと脆弱なのでしょう......。まぁ諸行が無常であることなど平家物語の時代から分かりきっていたことですけどね。

 

「夫婦で観てはいけない映画」と呼ばれているのをよく見かけますが、結婚したことがない人間にとっても、「結婚してすらこうなるのか......」という恐怖を突き付けてくるヤバい映画なのです。
ちなみに、ラブホに行くシーンが特にムリなので注目してほしいですにゃん。

 

 


5.ムード・インディゴ うたかたの日々

 

 

 

製作年:2013
監督:ミシェル・ゴンドリー

 

さて、続きましてはバカみたいにハッピーで結婚してもラブラブなカップルが出てくるこの作品です。

莫大な財産を持っていて働かずに優雅な暮らしを送っている主人公のコランは、友人宅でのパーティーで出会ったお嬢様クロエと恋に落ちます。2人は瞬く間に距離を縮め、結婚し、豪勢な新婚旅行へ出かけ、幸せの絶頂を極めますが......。

 

というあらすじだけを見ると何の面白みもないありきたりなラブストーリーのようですが、この作品の唯一無二の特徴はファンタジーな世界観です。
水道管からウナギが出てきたり、料理がなぜか勝手に踊りだしたり、ピアノの音色に合ったカクテルを調合する「カクテルピアノ」という小道具が出てきたり、社交ダンスでなぜか足がぐにゃぐにゃになったり、文字では上手く伝わらなさそうな不思議でシュールな映像が、物語の本筋とは何の関係もなく連発されるところがキュートです。
でもこれ、作者の真意は分かりませんが、個人的には恋愛に酔っている時の頭がパッパラパーの浮かれポンチになっている状態を表しているのだと思います。

 

............ってそれじゃあただのお惚気ハッピーバカ映画じゃねえかって?
いやいや、この作品が「失恋の傷口に塩を塗」ってくるのは後半の超展開からです。詳しく書くとネタバレになっちゃうのでボカしますが、あんなに幸せだったのに、そして「ブルーバレンタイン」のように醒めることなくお互い想い続けているのに、それでもこの映画の結末は悲しいものなのです。
こんなん観ちゃったら、どんなに上手くいってたっていつかは必ず別れが来ることを突き付けられて恋なんてクソゲーだと思わされてしまいますね。

 

 


6.ラブ・アクチュアリー

 

 

 

 

 

製作年:2003

監督:リチャード・カーティス

 

クリスマスを1ヶ月後に控えた19人の男女の恋の物語を同時進行で描いた群像劇です。

この作品に関しては、シンプルにたくさんの恋愛模様を強制的に頭に流し込まれるのがしんどいです。

 

何せ、物語の描き方がめちゃくちゃうまい。
純愛から悲恋から幼い無垢な恋からエロいのまで、多くの登場人物それぞれの恋を混乱させずに描き分け、なおかつ全てを感情を揺さぶるようなクライマックスに収束させちゃうんですから、これはもう超絶技巧ですよ。

 

135分と長めの映画ですが、逆に言えばたったそれだけの時間で9つのラブストーリーを同時に観られるわけですからコスパ最強で、一本で9度しんどくなる、失意の中では絶対に見たくない傑作なのです。

 

個人的には、やはり友達の奥さんに許されない恋をしちゃう男の話が一番好きです。人生で初めて映画を観て泣いたかもしれません。

 

 


7.ルビー・スパークス

 

 

 製作年:2012
監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス

 

最後は、恋愛映画どころか、今まで観た全ての映画の中でもベスト10に入れちゃうくらい大好きで大嫌いなこの作品です。

 

スランプに陥った作家のカルヴィンは、夢に現れた女性を題材に小説を書き始めます。すると、なんと自分が書いた小説のヒロイン「ルビー」が現実世界に現れるのです。自分が書いた通りになる理想の彼女・ルビーに惹かれていくカルヴィンですが、誰とでも仲良くなれる明るいルビーに嫉妬を燃やして彼女を自分に都合がいいように書き換え、2人の関係は徐々に歪んでいきます......。

 

冴えない根暗の主人公が描く理想の女の子は、冴えない根暗の私にとってもまさに理想の女の子でした。


そんな彼女との日々はとても甘美で、主人公と一緒に私もどんどんルビーに心酔して行きました。だってどこの世界に一緒に『ブレイン・デッド』(※世界一大量の血糊を使った人体破壊グロテスクゾンビコメディ映画)を観て喜んでくれる女の子がいますか!どこの世界にクラブでパンティ咥えて「今、履いてないの!」なんて言ってくれる女の子がいますか!

ちょっと勃ったわ!

しかも彼女、自分の思い通りにならなかったらタイプライターに向かって設定を書き出すだけで思い通りになるんですよ。最高でしょ!?最高だと思ったあなたは私と同じゴミクズです。
そう、自分の思い通りになる女の子を望む時点で、自分のことしか愛せない、人を好きになる資格も能力もないゴミクズだと突き付けて来るんです。甘いラブコメだと思ってたのに急に牙を剥きやがって!
そして迎えるクライマックスのシーンは完全にホラーですよ。しかもどんなホラー映画よりも怖い。

 

しかし本当に怖いのはホラー展開よりも希望の見えるラストの方でした。希望が見えてはいるけれど、本当にそれは希望かい?と。また同じ失敗を繰り返すだけじゃねえの?と。
そして私は思うのです。もう恋なんてしない。

 

 


☆あとがき
さて、ちょっとベタなセレクトでしたが、私が実際に失恋したり、諦めたりした時に観て死にそうになった映画を中心に7本選んで観ました。
正直ここに挙げた映画は二度と観たくもないですが、つらい時に観るとより感情を揺さぶられる作品たちであることも間違いないと思います。
ドMなゴミクズ野郎の皆さんにおかれましては、ぜひこれらの作品を鑑賞して快感絶頂していただけましたら幸いです。