偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(2009)


結婚式間近のダグと、新婦の弟、2人の友達の4人は独身最後の夜を楽しむバチェラーパーティーのためラスベガスへ向かう。
酒やギャンブルを楽しみ、翌朝目が覚めると全員昨夜の記憶がなく、ダグはいなくなっていた......。


作中のセリフのほぼ全てに「チンコ」が入ってる馬鹿で下品なコメディ。最高ですやん。
4人の中では一番まともそうなダグが行方不明になってしまい、残った3人は妻子持ちチャライケメンのフィル、生真面目な歯科医のステュ、新婦の弟で変人でアホのアランという、それぞれ別方向にキャラが立った凸凹トリオ。
フィルは仕事とかは出来そうな感じで3人を引っ張り、アランは笑っていいのか分からんくらいの絶妙なラインのボケをかましつつ素直な良いやつだし隠れた才能もあり、一番普通っぽいステュがなんだかんだ一番お笑い要因っていうバランスの良さ。
そして、なぜか本人役で登場するタイソン、チャイニーズマフィアのチャウさん、悪徳(?)警官たち、ステュの彼女と妻()など脇役もいちいちキャラが濃くて爪痕残していきます。

そして本作、実は隠れミステリ映画でもありまして。
朝、目が覚めた時の、ダクがいない、謎の女が部屋から出て行く、部屋に鶏と虎と赤ちゃんがいる、1人の歯が折れているといった大量の「謎」の提示があまりに魅力的!
そして、昨夜の出来事を調べに出ると、さらにわんさか出てくる謎、謎、謎。一難去ってまた一難とばかりに降りかかるトラブルをこなしていくうちにだんだんと昨夜の出来事が浮かび上がってくる構成。そして、ある意味意外な真相。
てな具合に、全編通して謎解き要素があることで小ネタ多めの馬鹿コメディに筋が通っててダレずに観やすいのが良かったです。

あと、エンドロールまで面白い、というよりはもはやエンドロールが一番面白いのも最高っしょ!
頭空っぽで楽しめて、特に後に残ることもないけど青春の思い出のようにたまに思い出してはまた観たくなるような、なんだかんだ凄く愛おしい映画なんすよね。
2と3も観ます!

一言だけネタバレで。






























































探してたダグは実はスタート地点にいたというシンプルに盲点をつく真相に驚かされました。大騒ぎして振り出しに戻るという構図としても美しい。
気付きそうなもんだけど、あまりにも枝葉の謎が多すぎることと、結婚式場などでダグの目撃証言があるせいで外にいると思い込まされてしまうミスリードが上手いと思います。

道尾秀介『満月の泥枕』感想

道尾秀介の読んでないやつを読んでいきます。


姪の汐子と2人で暮らすダメ人間凸貝二美男は、公園で泥酔して殺人の光景らしきものを目撃する。
曖昧な記憶にもやもやする二美男の元を訪れた少年は、二美男が見たのは伯父が祖父を殺す場面だと語り、二美男に遺体の捜索を頼む。
事態はやがて二美男の住むアパートの面々や少年の家族も巻き込んで大きくなり、三国祭りの日にとある"作戦"が実行されるが......。


こないだ読んだ『サーモン・キャッチャー』に似た雰囲気の、どうしようもない奴らが大騒動に巻き込まれていくお話ですが、本作の方がだいぶ面白かったです。
やはり『サーモン』は他視点の群像劇にすることでドラマがぼやけた印象があり、対して本作は二美男という主人公視点で語られます。彼の抱える過去と、姪っ子の汐子との今の暮らし、そして汐子を失うかもしれない未来......という主軸がしっかりあるので、周りの騒動がどんだけわちゃわちゃと大きくなって揺れ動いても一本筋の通った物語として読み進められました。
この主人公の二美男という男がすげえ魅力的なんですよね。家賃は滞納するわ、酔ってトラブルに巻き込まれるわ、子供相手に平気で嘘をつくわと、どうしようもないダメ人間なんだけど、その分世間擦れした狡さや傲慢さとは無縁のある種ピュアとすら言えるような人で、何かするごとに「おいおいおい」と突っ込みたくなりつつ気が付けば彼を応援しながら読んでいることに思い当たります。
一方、姪っ子の汐子は彼とは逆に賢くしっかりしててどっちが保護者やねんっていう名コンビぶりも最高......でありつつ、2人とも実の親子ではないだけに心の中ではわだかまりのようなものも抱えているという関係性がほんと最高......。
そして、脇を固めるアパートの面々や剣道一家もめっちゃキャラ立ってて良いっすね。本作でいちばんの推しはもちろん汐子ちゃんですが、脇役たちの中では、生真面目で知恵が回るわりにどっかトボけたところもあるタケル君が面白くて好きでした。

お話としては、本当に死体があるのかどうかすら怪しい曖昧模糊とした"事件"をわちゃわちゃと追いかけるうちにどんどん話が大きくなっていくというスピーディーでドタバタした展開が魅力。
著者本人が言うように、中盤とラストにクライマックスがあって、1粒で2度美味しいです。
大きなどんでん返しとかよりは、常に予想のつかない展開が続くのに振り回されるのを楽しむ作品ですね。ちょっとした意外性や伏線拾いを連ねながら、最後はなんだかんだ人情にホロリとさせられるような、道尾作品の優しい部分だけが詰まったような一冊となっています。
ひとつ惜しいというか、あれだったのが、あの最後のあれ、いつものあれですよね......ちょっと何言ってるか分かんないけど、道尾作品を全部読んでたら「またそれかー」となってしまうとこがある、って話です......。
とはいえ、そもそも黒道尾が好きな私ですが、本作は白道尾の中ではかなり好きな方でした〜。

道尾秀介『サーモン・キャッチャー』感想

道尾秀介の読んでなかったやつを読んでいきます(数年前にもやったぞそれ)。

屋内釣り堀「カープ・キャッチャー」を軸に、どうしようもないやつらが一匹の鯉を巡る大騒動に巻き込まれていくというお話。

あるトラウマから対人恐怖になったひきこもりの青年・賢史とその妹・智。
同じく人と話すのが苦手な大洞と、その娘で釣り堀でバイトする明。
釣り堀では釣りの神様と崇められる孤独な老人・ヨネトモ。
裕福なのに満たされない気持ちを抱える市子。
という6人が主役の群像劇となっています。

複数のキャラの視点から話が進み、無関係だった彼らがだんだん繋がっていく感じや、細かい小道具が全て伏線として回収される爽快さなど、どこか伊坂幸太郎っぽさを感じるストーリーラインになってます。
ただ、トホホなキャラたちが伊坂作品よりも下世話なユーモアと共に空回りしながら奮闘する様はやはり道尾秀介独特の味わいがあり、新鮮さと安定感が同時にある作品となっています。

また、本作はケラリーノ・サンドロビッチとのコラボ企画で、道尾秀介が小説を、ケラさんが映画をそれぞれ制作するということらしいんだけど、映画の方は未だ音沙汰がないのでちょっと心配になりつつも楽しみです。
舞台劇みたいな雰囲気のある作品なので、そういう感じで映画化されたら凄い合いそう。あとかなりコミカルで現実離れした話だから漫画化しても面白そうだと思います。

ただ、個人的には正直そんなにハマらなかったです。
群像劇になってることでキャラたちが絡み合うドタバタの楽しさはあるんだけど、その分道尾作品でも最もシリアスさに欠ける気がして、ちょっと気が抜けすぎなように感じてしまいました。
また、作中に出てくる架空の国の架空の言語「ヒツギム語」がギャグとして使われていて、空耳アワーみたいに微妙に日本語っぽいってネタなんだけど、終盤になってくるとこれがクドくて飽きてきてしまうのがなんとも......。例えば最初の方の「プライド」のヒツギム語訳なんかは笑いましたけど。

まぁそんな感じで、軽く読めるし色んなものが繋がる気持ちよさはしっかりあるんだけれど、ノリが軽すぎてあまり後に残らないのが好みではなかったかなぁ。

ポンヌフの恋人(1991)


アレックス三部作の3作目。
昔からタイトルは聞いたことあったけど「きみに読む物語」とかあんな感じのロマンスかと思ってたら全然そんなことはなく、燃えるような破滅的な愛を描いた傑作でした。あんなもんと一緒にしてごめんなさい。


ポンヌフ橋で暮らす路上生活者のアレックスと、眼病を患った美大生のミシェルの破滅的な愛を描いたお話。

実在のポンヌフ橋を貸し切るつもりがスケジュールの都合で無理になって郊外の街に橋をセットで作った結果巨額の制作費がかかってしまい完成すら危ぶまれた......という曰くつきの作品らしいです。
なんでも制作費は当時フランス映画史上最高だったらしいですが、いい意味でそんなことは感じさせないアングラ感があってめちゃくちゃ良かったです。

アレックスはもちろん、ヒロインのミシェルも前作のアンナと同じ人が演じてるとは思えないほど2人とも雰囲気がガラッと変わってて驚きました。
前作では少年少女という感じだったのがすっかり大人になって......みたいな。特にアレックスは坊主頭になることで顔の荒っぽさがダイレクトに分かってかなりのイメチェン。
映像もバキバキに決めてた前作までと比べてあえて手持ちカメラでブレさせたようなシーンもあり、作りもの感が薄まって地に足がついた印象があります。

お話はというとこれまで以上にどうしようもなくノーフューチャーな感じの2人のラブストーリーで、未来が見えないからこそ今だけに命を燃やすような激しさが強烈にエモくて、3作の中でも突出して好きです。
地に足ついたといっても、やはり夢のような美しい場面や悪夢のような場面もいくつもあり。
特にやっぱ有名な火吹き踊るシーンは凄かった。燃える情念、走る焦燥、衝動。映像だけでこんなに魂を掴まれて揺さぶられることなんかあんのかよってくらい。歳とって感性が鈍ってきてたからいいものの、これを恋の季節に観てたら相手の家に放火くらいはしてたわ絶対。
あと、地下道に火を放つシーンとかも圧巻でした。

後半の、ミシェルをなんとか去らせまいとする強烈なエゴが、ゆったら最悪なんだけどめちゃくちゃ分かってしまうんだよね。恋のためなら赤の他人の命なんか蠅くりいのもんだし、相手の目なんか見えなくなった方がいい!くらいの身勝手さ。それだよそれ。恋って。

しかし、そんな無軌道なメチャクチャな暴走をしつつ、ラストはこれまでの作品とは趣が異なります。正直昔の自分だったら日和りやがってと思ったと思うんだけど、今はもうこれが最高!
あと最後のアレ、地味にあの超有名作の元ネタだったりすんのかな。

以下、三部作全部のネタバレしつつ一言だけ。

























































ボーイミーツガールはなんか2人とも死んだ(?)みたいな最も破滅的な結末だったのに対し、汚れた血では主人公が死によってヒロインたちを解放するような男目線のロマンチシズムな話。
そして、本作ではついにヒロインが主人公(と自分)を煌めく未来へと解き放つような最も外向きで最も女性的な感じもする結末になり、三部作が進むにつれどんどんハッピー寄りな終り方になってんのがエモかった。
恋の季節の私だったらこの結末をヌルく感じてたかもしれないけど、今はもう大人なのでこれが凄く心地良かった。それは感性の摩耗なのかもしれないですけどね。

汚れた血(1986)


恋人を捨ててパリへやってきた青年アレックス。危ない仕事の最中に父の仲間だったマルクから、とある製薬会社が開発中の薬を盗み出す仕事を持ちかけられる。アレックスはマルクの愛人アンナに一目惚れしてしまい......。


詩的なモノローグのようだった前作と比べると、「愛のないセックスで感染する死病STBO」を軸に、その特効薬を盗むというクライムサスペンス的な要素も入って、より物語らしくなったとは思います。
ただ、そういうお話として観ると、訓練のシーンがあったのに実戦でそれ別に使わなかったり、そもそもSTBOという病の存在自体が空気で、その設定要るの?と思ってしまいます。
とはいえこの設定のおかげで退廃的な死とセックスの匂いが濃密になってて雰囲気が最高なので良いんですけど。

そしてストーリーラインなんかはぶっちゃけどうでもよくて、本作もやたらと美しい映像で描かれる恋の刹那が鮮烈に印象に残ります。
モノクロの前作から一転してバキバキの色彩。これだけでもうイッちゃいそうになりますよね。くすんだ原色の赤や青が目に鮮やかで、悪い夢でも見てるかのよう。
本作も夜の場面が多いですが、やっぱり夜の空気感が凄え良いんだよな。特にボウイのモダンラブで走るとことか最高やん......ってのはまぁ曲が好きなのもデカいけど。しかしこのアングラな映画にあのボウイの中ではポップな曲が流れる微妙な違和感が変に印象的で良いんですよね。

そして、本作はメインヒロインのアンナと元カノでサブヒロインのリーズのダブルヒロインなわけですが2人ともマジで可愛すぎた......。
特にアンナを演じるジュリエット・ビノシュさんと監督が付き合ってたらしく、愛のパワーなのかめちゃくちゃ魅力的に映ってました。俺も女の子を可愛く撮りたい......愛が足りないのか......。

キラーカブトガニ(2021)

半分ネタのつもりで観に行きましたがごめんなさい、最高でした!

映画『キラーカブトガニ』公式サイト

放射能によって凶暴化したカブトガニが人間を襲う......というあらすじで近頃のZ級エクストリームサメ映画みたいなノリを想像したら、どっちかっつうと一昔前のゾンビコメディみたいなしっかりした作りで懐かしく嬉しくなりました。

なんでカブトガニが人を襲うのか?とかそんなんは3秒くらいの映像でぱぱっと見せて、冒頭から、というか冒頭だけおっぱいもぱぱっと見せて血みどろスプラッタもついでに見せて青春パンクみたいな音楽流しとけば楽しいでしょ!みたいな勢いがもう最高!シーンの切り替わりがパンク+空撮しかバリエーションないのも最高!

しかし話が始まってみると、主人公のフィルは車椅子の天才理工少年で、ガールフレンドのマディと共にメカ義足の開発をしているというしっかりしたキャラ造形。保安官補のフィルの兄貴は学生時代に担任教師だったマディの母親に憧れを抱いていて......と世代を画した2組のカップルの恋模様が軸になり、意外と、思ったよりはしっかりドラマ性もあるのがうんこサメ映画との格の違いを見せています。「サメの時代は終わった」というキャッチコピーの通り、ビシッとサメに引導渡してるぜ!くらいの傑作です。
とにかく彼らのキャラが良い。
ママはセクシーでえっちでカッコいいし、兄貴も弟思いでいい奴だし、ヒロインは既婚者じゃなかったら好きになってたくらいいい子だけど、何より主人公の表情が好きすぎる。片頬だけ上げて笑うオタク笑いの中になんか彼のこれまでの人生の全てが凝縮されている気がして、セリフで語らなくても彼の全てが分かる、めちゃくちゃ名演技でした。そんなこんなでかなり感情移入させられてしまったので中盤のあのロマンチックなシーンは泣きました。というか、もはや青春映画として良すぎて一瞬カブトガニ要素いらねえよと思ってしまいました。

いや、そんなことはねえ!カブトガニがまた最高なんすよ!
キラートマトみたいに「うじゅうじゅうじゅ」とか言って鳴くのが最高に可愛いし、もそもそと這ってたかと思えば甲羅の裏の顔は表情豊かだったりするのも可愛いし、途中からもはやカブトガニじゃねえ超進化を遂げてマジでキラーカブトガニって何だったんだよ!?ってなる確信犯的なテキトーさも最高!
そんなこんなで、序盤はクソサメ映画っぽいノリでありつつ、ゾンビコメディっぽい青春と逃亡劇になりつつ、終盤は理系少年が奮闘する〇〇モノになったりと、80分の短さの中でジャンル横断。気付けば「あれ、こんな映画だっけ?」と思うところまで飛躍するワンダー!エンドロールも含め、まさにその点トッポってすげえよな、最後までチョコたっぷりだもん的なサービス精神が最高!ツッコミを入れさせられるのも込みで、常に面白く観客を飽きさせないように気配りがされてて、その辺りが独りよがりなクソサメ映画とは大違いなんすよね。あのあまりにもアホくさく、しかしハッピーなラストシーンも最高っすよね。

なんつーか、B級映画ってこういうのでいいんだよ!っていう見本みたいな作品でいい意味で、エログロにタバコにディスコにアホなラストと古き良きホラーコメディの決定版みたいなのを今この時代に観られるなんて感動モンで最高でした。

ただ一つだけ、ラドゥというキャラが(めちゃくちゃいいキャラなんだけど)かなり差別的に感じてしまい、そこは古くなくていいから現代の価値観にアプデしといてほしかったかな、というのが唯一残念なところ。それがなければ満点でしたね。

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022)


パンデミック下、名探偵ブランの元に届いたパズルBOX。それはギリシャの孤島で開かれる大富豪マイルズによるパーティーへの招待状だった。
マイルズは余興として自らが殺される殺人ゲームを企画するが......。

ナイブズ・アウト: グラス・オニオン | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト


『ナイブズ・アウト』の続編の名探偵ブノワ・ブラン シリーズ。
前作は大作家の館での遺産相続をめぐる事件でしたが、今作は孤島での殺人事件というこれまた古典的なミステリの意匠と展開。
それでいて、導入部ではみんながっつりマスクをしてきちんとコロナの存在を描き、容疑者は陰謀論系YouTuberに炎上系ツイッタラーといった今風な要素も取り入れ、前作以上に古典的ミステリ感と2022感との良い違和感が味わえるのが凄い。

バカなテンションととぼけた皮肉の同居する絶妙なユーモアも前作よりパワーアップし、笑いながら観ているうちにぽんぽんと伏線らしきものがばら撒かれ事件が起こるスピード感!
そして、ある時点でガラッと展開が変わってジャンルすら変わって観客を翻弄してくれるのも前作同様で期待通り。
そして全てのピースが出揃って明かされる真相は、これまた前作と同じ不満点を感じつつも、やはり前作以上に良い意味で馬鹿馬鹿しくぶっ飛んだ真相となっていて驚きつつ笑えるバカミスの味を久しぶりに味わえました。
さらに謎解きが終わった後のアレコレもより痛快で、個人的には全体に前作より楽しめました。
主題歌も今回はタイトル通りで、なかなか渋い選曲よね、グラスオニオン。そうそう、表面的なモチーフに見えていたタイトルの綺麗な回収も最高でした。

唯一惜しむらくはネトフリ制作だからネトフリでしか観れない点。そもそもこれは映画館で見たかったし、うちネトフリ入ってないから実家まで行って見せてもらわなきゃならんかったわい。

ともあれ、本作ではブラン探偵の魅力もさらに増してどんどん好きな名探偵になって行くので、次作も作って欲しい。国名シリーズや館シリーズのように10作くらいは作って欲しい!そして10作完結したらどれが好きかを話し合いたい!ちなみに館シリーズは時計館派です。ベタ!

以下ネタバレ。




































































中盤からヘレン視点のコミカルサスペンスになったり、名探偵が推理ゲームが始まる前に真相を突き止めてしまったりみたいな"ハズシ"と、ポッケに物が入ってて撃たれても助かったり、チリソースで死んだふりしたりといった"ベタ"が共存しているのが、古典ミステリと現代社会風刺の両立というテーマにも合っていて気持ちよく翻弄されました。
また、「犯人がバカだった」というあんまりな驚愕の真相には爆笑。これぞ本物のバカミスってもんでしょ!なんせバカすぎて逆に事件が複雑に見えわけですからね......。
何枚もの皮があるようで実はただの空洞な「グラスオニオン」というタイトルが、ここにきて島の館の建築意匠から物語そのものを表すモチーフに早変わり。
ちなみにビートルズのグラスオニオンという曲の歌詞も、これまでの曲名を意味深に配置してリスナーを深読みに誘って揶揄うというジョンの皮肉が効いたもの(らしい)ので、そういう意味でも本作の内容にピッタシ合ってて素晴らしい。
そして「絶対なんか企んでるやろ」というガラス割りそのものが爽快な上に、もちろんこれはアレの前振りでドッカーン!っていう、ここ映画館で観たかったわ!!!モナリザもとばっちりすぎてわろた。
どほけたようで切れ者で、無関心なようで強きをくじき弱気を助けるブランさんのキャラクターもどんどん好きになってしまいました。