偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜(2019.9)

9月はほとんど映画を観ませんでしたね......。最近は読書に比重が偏ってしまっています。




アス
イングロリアス・バスターズ
サスペリアpart2




アス

はい、観てきましたよ。

夏休みに海の近くの町の別荘にやってきた一家。実はママは幼少期にこの町で"もう1人の自分"を見るという恐怖体験をしてました。で、どことなく居心地の悪さを感じるママでしたが、その夜、別荘の外に赤いツナギ姿の"私たち"にクリソツなファミリーがいるのを発見し......。

ってゆうドッペルゲンガーファミリーの設定が特徴的な、『ゲットアウト』のジョーダンピール監督2作目です。
ゲットアウトもめちゃ面白かったけど個人的な偏愛度としてはそんなに高くなかったんですが、今回は(映画館で観たのもあるけど)ハマっちゃいましたね。

ただ、今作も前作同様に先の読めない展開自体が見どころの一つでもある作品なので、ほとんど書けることがないんですね。なんで簡単にですが......。

まずは1番浅瀬の部分はエンタメ性の非常に高いホラーになってまして、色んなサブジャンルを取り入れつつ緊張感を保ったまま奇妙な展開を続けることそれ自体がとにかくめちゃくちゃ楽しいです。

しかし、その皮を剥いでみると、そこはゲットアウトの監督らしく、私という人間の内面を抉られるようなパーソナルなテーマが内包されていて、さらにそれを敷衍してアメリカという国、そして人間存在そのものまでも抉り出すような深遠なテーマを含んでいます。
恥ずかしながら知識不足で分からない部分も多かったですけど、観た翌日にパンフの解説を読んで、また真の恐怖に震えるという遅効性の怖さまでも体験させてもらいました。

もちろん、設定に無理があるとか説明的すぎるみたいな批判も分かるし、ミステリアスなホラーという体裁を取っているならその辺も重視すべきってのも分かるけど、個人的にはわりとそこはどうでもよくて......。
あらすじを説明すれば完全にホラーなのに観終わった後で考えさせられることは社会派っていう違和感に酔って胡乱な気分で映画館を後にする不思議体験ができただけでも良かったと思います。
今年は自分にしてはわりと映画館で映画見てるけど、今んとここれが一番ふぇいばりっとですね。
ほんとは個別で感想書きたかったけど、なかなか難しかったのでここにおいときます。





イングロリアス・バスターズ


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はい、タラちゃんのナチス映画ですぅ。
メラニーロラン演じる家族を殺されたユダヤ人の少女がナチスに復讐しようとしたりブラピ率いるバスターズという軍団がナチ狩りをしようとしたりみんなで無駄話したりする映画でした。



冒頭の、ユダヤを匿う農夫を"ユダヤハンター"と呼ばれるナチのファッキン大佐との会話からして最高ですやん。
長い会話劇は間延びしてるようでいて状況設定の妙によって気付けば前のめりでバチクソ見入ってる自分を発見しました。後半にもありますが、そういう無駄話のようでいて水面下で腹の探り合いをバチバチやってるっていうシーンが上手いこと上手いこと。独特の緩急にすっかりやられちまいましたよ。
ストーリー自体はわりとシンプルですが、そういう演出の巧さのおかげで長いのに飽きませんでした。

あと、出てくる女の人がみんな素敵。
ヒロインのメラニー・ロランはもうもちろんのこと、映画女優を演じたダイアン・クルーガー氏の色気にもくらくら。あと、1番は冒頭に農夫の娘役で一瞬出てきたレア・セドゥが1番美しかった。え、この子誰?なんでこんな可愛いのにこんなちょい役なの?と思ってわざわざ調べましたもん。そうかそうかレア・セドゥでしたか、どうりで。


そして、ラストには唖然......と言いたいところですが、同じく史実を扱ったワンスアポウッドを先に観たのでまぁそうだよね、という感じにはなってしまいました。それでも愉快痛快で爆笑させていただきました。終わり方も完璧。

このテーマ的に、殺戮をやらかしたナチスさんに対して殺戮で天誅を下すというやり方はいかがなものかと思わなくはないんですけどね。たぶんほかの監督だったらその辺に文句言いたくなるけど、タラちゃんだもん。ナチス殺すですぅ〜♪なんて言ってるタラちゃんを想像したら可愛いじゃないですか。だから許します。


そんなこんなで、テンションぶち上げのサイコーな映画でしたしメラニーロランのファンになりました。




サスペリアpart2



ずっと昔に観たのですが、アマプラに"完全版"があったので再観。

言わずもがなですがサスペリアとは一切関係のない、監督が同じなだけの便乗タイトル。原題はプロフォンド・ロッソ(=ディープ・レッド)であり、めちゃかっこいいので今からでも原題呼びを広めていくべきでは、と思います(と言いつつ通りがいいので邦題で呼んでしまう)。


ピアニストの主人公がひょんなことから目撃してしまった殺人事件の謎を追うというミステリーですが、アルジェントらしい怪奇趣味や殺しの美学はもちろんてんこ盛りでなかなか贅沢な傑作。ミステリとしてのとあるネタも最高です。



まず、オープニングがもうガンギマってますね。
ゴブリンによるメインテーマがもうヤバい。不穏に唸るベース、切り裂くようなシンセ、聴いてるだけで不吉な予感にテンションぶち上げ。家の設備でできる限りの大音量で観ましたが、こういうのこそ爆音上映してほしいっすわ。で、そこに挟まれる子供の歌の不気味さと事件のシーンの美しさ。ここまで完璧なオープニングの映画ってなかなかないっすよね。

中身に関しても、ワンカットワンカットがすべて美しい。話の流れは正直中盤ちょっと退屈になったりもするものの、映像だけで観てられますね。色づかいといい、カメラワークといい、、、最高!
そして前見たときはそんな気にしなかったけど結構ラブコメ的というか、主人公とヒロインの掛け合いににやにやしちゃうところが多くって、ところどころユーモアでガス抜きしてくれるのも親切設計ですね。最初は怖く見えたダリアニコロディがどんどん可愛くなっていきます。

で、ストーリーも中だるみはするもののアルジェントにしてはかなり分かりやすくまとまっていて、伏線はしっかり回収されてミステリーとしての解決もあって意外性もばっちりと、文句なし!特にあのトリックは、2度目だと爆笑以外の何者でもないっすね。

殺人シーンも「なんでそこまでする必要があんねん」ってくらい残虐で楽しいこと楽しいこと。観てるこっちまで人を殺したくなるくらい。

で、オープニングも最高だけど、ラストも最高!!こんなカッコいい終わり方もやっぱりそうそうないでしょ。
いやぁ、2度目ですけどやっぱり堪能しました。
出来るなら、夜中に酒飲みながら観たかったけど、シャカイジンの身にそれは重いのでね。