偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

思い出のラーメン

お題「思い出の味」


突然の謎の投稿をごめんなさい。

フォロワーさんに「たまにはなんかエッセイでも書いてみたら」と言われ、「食べもの」というお題を出されたのですが、正直お題の範囲が広すぎるわとちょっとぷりぷり怒っていたところ、こちらの方のお題ルーレットにも「思い出の味」というのがあるのを見つけたので思い出の食べ物について書いてみます。
という内輪ノリによるブログなので、特に面白いことも深い意味も鋭いオチもなく、読んだところで得るものは何もない記事です。どうかこれを目にした方がいても、読まないようにお願いいたします。





さて、学生時代のことですが、私の通っていた大学の近く、八事の駅前にある「豚鯱」というラーメン屋さんによく部活の人たちと食べに行ってました。

初めて行ったのが正確にいつ、誰となのかは記憶にありませんが、たしかその当時仲の良かった、学年は1つ、年齢は4つくらい上の先輩に連れられてだったような気がします。
というのも、当時、田舎から名古屋に通っていた私はその人に連れられて色んなお店に行っていたから、そこもそうだったはずなのですね(尤も風俗にだけは誘われても「純潔は本当に好きな人に捧げたいですので」と言って断っていましたが)。

そこは駅前にありがちな幅が狭くて奥行きだけでなんとか成り立っている類の小さいお店でした。でもお客さんはわりといつも多かったので、店内で話し込んだりしようものなら「食べ終わったなら出てってもらえる?」と店主さんに追い出されるようなお店でした。
しかし、その味は無類で、こってりしたスープにチャーシューではなく焼いた豚肉と生卵が乗っていて、なぜかご飯が一緒についてくるという、ラーメンなんて一風堂スガキヤしか食べたことのなかった当時の私には衝撃的な内容だったのです。
私も今となっては肉そばという文化があることを知っていますが、何事も初めては実際以上に素晴らしく感じられるものでありまして、初めて食べた肉そばの味の虜になってしまったのでした。

それからというもの、そのお店には事あるごとに足を運ぶようになりました。

2年生の時には、昨年先輩に連れて行ってもらったのをなぞるように、はじめての後輩と一緒に行って、その後で近くのジャスコのフードコートで好きなAV女優の話やセルフフェラチオの可否、先輩の中でヤリたいのは誰かなどと、他愛のないエロ話に興じたり。

3年生の時には、わりと仲がいいと思っていた同い年の友達とその店に行く道すがら、「××くんって下の名前なんだっけ?」と3年目にして衝撃の知らんかったんかーいをぶちかまされた挙句、「そっちだって私の苗字知らないでしょ」と逆ギレされ(ちなみに知ってた)、普段より塩気の効いた肉そばをすするなどしたことも今となっては愉快な思い出であります。

そして、4年生になってからは、当時好きだった女の子を、他の人たちと抱き合わせで誘って行ったりしたような気がしなくもないけどその件については記憶があらかた抹消されているので詳細は不明であり......。

しかし、とにかく、あのお店はたしかに大学生の4年間を彩る思い出の味でした。



社会人1年生の終わり、人生で初めての彼女が出来て、先方もラーメンが好き......というかもはや共通の趣味がラーメンだけみたいな状況であったので、ちょっとドヤ顔で「俺の知ってる美味いラーメンの店に連れてってやるよ」と言ったら「ああ、あそこね、知ってる」と返されてすごく恥ずかしい思いをしましたが、ともあれこれは共通の話題だラッキーとばかりに行ってみたらなんと閉店していました。
味も良かったしお客さんも結構いたのになんでだろうと、今でも悔しく思います。むしろ、今こそデートで行きたいのに!と。


働き始めてから多少はお金も持てるようになって、それなりに食べたいものはいつでも食べられるようになったものの、潰れた店の味だけはもう二度と味わうことができない......。
そう考えると、今でもたまに、あの味が無性に懐かしくなっては、理不尽に喪ったものの大きさに呆然とすることがあります。
そして、その度に思い出は膨れ上がっては美しくなって、きっともはや実際以上に美味しいあの肉そばの味が、私の脳裏と舌に何度も何度もフラッシュバックするのです。

しかし、あのお店はたしかにあの頃の私の青春の象徴の1つでした。あの味との再会は叶わぬにしても、最後にここで一言だけ言わせてください。

青春の思い出を、ありがとう。