偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

若林理央『母にはなれないかもしれない 産まない女のシスターフッド』感想

妻が買ってきたので借りて読みました。母にはなれないかもしれない―― 産まない女のシスターフッド作者:若林理央旬報社Amazon 「子供を産まない」という選択をした著者が、同じように産まないことを選んだ女性や、産めなかった女性、産んだけど産みたくなかっ…

川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

敬愛するリーガルリリーたかはしほのか先生が勧めていらっしゃったので読んでみました!すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)作者:川上未映子講談社Amazon フリーの校正者として働く34歳の入江冬子。他人と関わるのが苦手な彼女は、自宅で日々黙々と仕事をし…

北大路公子『私のことはほっといてください』感想

2014〜2016年に連載されたエッセイを集めた1冊。私のことはほっといてください (PHP文芸文庫)作者:北大路 公子PHP研究所Amazon もはやこの人の本の感想を書こうというのも野暮であり、なんでもいいから1冊買って、最初の1話だけ読んでみてくれ!そしたら面白…

吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』感想

リーガルリリーの海さんがInstagramに載せていたのと、フォロワーのまひろさんにも勧められていたので、信頼する2人が勧めているならまぁ好きだろうなと思ったらやっぱり好きでした。それからはス-プのことばかり考えて暮らした (中公文庫 よ 39-1)作者:吉田…

村上春樹『回転木馬のデッドヒート』感想

リーガルリリー海さんがInstagramで紹介していたので読みました!回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)作者:村上春樹講談社Amazon本書は著者本人がこれまでに色々な人から聞いたその人の人生のお話を短編小説風に書いたもので、厳密には小説ではない......…

道尾秀介『雷神』感想

埼玉で料理屋を営む幸人のもとにかかってきた脅迫電話。それをきっかけに、15年前の妻の不幸な事故死、そして30年前の故郷の村の祭りの夜の事件が、現在の彼と姉の亜沙実、19歳の一人娘・夕見を故郷の村へと引き戻し......。雷神 (新潮文庫 み 40-23)作者:道…

高瀬隼子『め生える』感想

『おいしいご飯が食べられますように』の高瀬隼子による、U-NEXTから出版された中編。め生える作者:高瀬 隼子U-NEXTAmazonU-NEXTが本を出してるってこと自体最近まで知らなかったんですが、そこから今最も注目してる作家の1人である高瀬さんの作品が出ていた…

梓崎優『リバーサイド・チルドレン』感想

カンボジアの川沿いの土地でストリートチルドレンとして暮らす日本人の少年ミサキ。自分を拾ってくれたヴェニイら6人の仲間たちとゴミ拾いをして暮らしていたが、ある日ストリートチルドレンを排除しようとする警官"黒"に仲間の1人が殺されてしまう。それを…

青崎優吾『地雷グリコ』感想

先日フォロワーのばぶるさんと初対面した時に本屋で買わされました。地雷グリコ (角川書店単行本)作者:青崎 有吾KADOKAWAAmazon 勝負事に強い女子高生の射守矢真兎と友人の鉱田ちゃんが挑むのは、じゃんけんで階段を上がるあのグリコ(ただし地雷段付き)の地…

小山田浩子『庭』感想

2013年から2018年に発表された短編・掌編を集めた1冊。庭 (新潮文庫)作者:小山田 浩子新潮社Amazon日常の中で感じるけどすぐに消えてしまうような気持ちを取り出しつつ、現実から少し遊離した白昼夢のような雰囲気もあり、「怖い」まで行かない不穏さにヒリ…

根本尚『怪奇探偵・写楽炎2 妖姫の国』感想

怪奇探偵・写楽炎 2 妖姫の国【文春デジタル漫画館】作者:根本 尚文藝春秋Amazon写楽炎シリーズ・第2集の本作は、洋物(?)の怪事件や異色作クイズマスター、ギャング団のお話など、1巻より事件の雰囲気のバリエーションが増えていて面白かった。 「奇想」と…

根本尚『怪奇探偵・写楽炎1 蛇人間』感想

怪奇探偵・写楽炎 1 蛇人間【文春デジタル漫画館】作者:根本 尚文藝春秋Amazon以前読んでめちゃくちゃ良かった『少女探偵火脚葉月最後の事件』の著者による、別の少女探偵・写楽炎ちゃんの活躍を描いた短編集。 怪奇探偵というタイトルですが、炎ちゃんは別…

大澄剛『千代に八千代に』感想

千代に八千代に アクションコミックス作者:大澄剛双葉社Amazon国語、理科、数学......学校の教科をモチーフにした全7話の短編からなる連作集。 各話が緩やかにつながっていて、前の話の脇役が次の話で主役になったりしながらだんだん作品の世界が広がってい…

藤本タツキ『さよなら絵梨』感想

『チェンソマン』の著者の読み切り中編。さよなら絵梨 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:藤本タツキ集英社Amazon 余命短い母親の「私が死ぬまでを撮ってほしい」という願いで優太が作った映画は、文化祭でボロクソに言われ嘲笑われた。 母の死後、自殺しよう…

panpanya『商店街のあゆみ』感想

著者の記念すべき10冊目の著作らしく、私としては『蟹に誘われて』に続いて2回目のpanpanyaさん体験。商店街のあゆみ (楽園コミックス)作者:panpanya白泉社Amazon 全体としては『蟹に誘われて』の感想に書いたこととそんなに変わらないんだけど、そんな個性…

野原広子『消えたママ友』感想

本棚探偵さんにお借りした漫画です。本棚探偵さん、あざまる水産。消えたママ友 (コミックエッセイ)作者:野原 広子KADOKAWAAmazon レタスクラブという生活情報サイトに連載されていた漫画らしいんですが、今夜の献立とかと一緒にこんなもんを載せるなよ!と…

施川ユウキ『オンノジ』感想

以前読んだ『ヨルとネル』の著者による単巻のストーリー4コマ。オンノジ (ヤングチャンピオン・コミックス)作者:施川ユウキ秋田書店Amazon本作は『ヨルとネル』の2年前くらいに連載されていた作品。小人になってしまった少年たちの2人だけの逃避行を描いた『…

喜国雅彦『天国の悪戯』感想

1992年から1995年にかけて『夕刊フジ』で連載された4コマを集めた作品集。天国の悪戯作者:喜国雅彦JコミックテラスAmazon帯には「不条理ギャグ」とありますが、不条理ではあるものの笑いどころは分かりやすく、表紙の重厚感に反して何も考えずに気楽に読めて…

オノ・ナツメ『not simple』感想

名前はもちろん聞いたことあるけど読んだことなかったオノナツメさんの単巻の長編漫画。not simple (IKKI COMIX)作者:オノ・ナツメ小学館Amazon 父親に「恋人を殺す」と脅されている少女アイリーンは、道端にいた浮浪者風の青年イアンを恋人の身代わりにしよ…

2024年2月に聴いた音楽まとめ

2月に聴いた音楽です。 The Umbrellas「Fairweather Friend」Fairweather Friendアーティスト:UmbrellasTough LoveAmazonインディーロックってこういうのだよね!みたいなイメージ通りのインディーロックバンド。ところどころスピッツっぽさを感じる(という…

京都旅行2024 その2

2日目です。疲れたのでざっくり書きます。 グラン・ヴァニーユ。日本一美味しいケーキ屋とフォロワーに聞いて行きましたがマジで美味しかった。 薫りの博物館的なやつ。 cafe1001。チョコミン党のお店。BGMもいい感じ。 名画の庭。 ラーメン小路で富山ブラッ…

京都旅行2024 その1

月火で有給をとって京都旅行の予定だったのですが、日曜も仕事を半日で切り上げて日曜から来ました。 夕方からとはいえ2泊3日になると1泊2日より気持ちの余裕がダンチで良かったです。 喫茶ソワレ。 戦後まもなくにできたお店らしく、レトロな雰囲気と青い照…

春のプレイリストを作りましたよ。

先日趣味で春のプレイリストを作りましたので紹介します。↑私はApple MusicだけどSpotifyユーザーのが多そうなのでSpotifyでも作ったよ!みんな聴いてね! さて、春という季節には新しいことが始まるワクワクと別れや散っていく花の儚さのふたつの側面があり…

スラムドッグス(2023)

犬のレジーは飼い主のダグとの「取ってこいクソッタレ」ゲームで家から遠く離れた場所に置き去りにされてしまう。 いつものボール拾いゲームだと思って捨てられたことに気付かないレジーだったが、野良犬のバグ、美人犬のマギー、巨根犬のハンターと出会った…

落下の解剖学(2023)

雪山にある山荘で男が墜落死した。 事件当時、山荘にいたのは人気作家の妻と、視覚障害のある息子だけ。 やがて妻に容疑が向けられ、裁判で徐々に夫婦の秘密が明かされていくが......。 なんか、長かった......。 冒頭の異様さと、夫婦喧嘩の録音が流される…

ザ・ベイビー/呪われた密室の恐怖(1972)

福祉事務所で働くアン。新しく担当になったワーズワース家を訪ねると、そこには母親と長女、次女、そして体は大人なのに赤ん坊として育てられていて話すことも歩くことも出来ない弟の"ベイビー"がいて......。ザ・ベイビー 呪われた密室の恐怖(日本語吹替収…

ソウルメイト(2023)

奔放だが繊細なミソと生真面目なハウンは、小学生の頃に転校生として出会って以来お互いに1番大切な存在として一緒に生きてきた。しかしハウンがジヌと付き合うようになり、やがて2人の人生は別々の道へと枝分かれしていくが......。 ジャケ写だけ見てなんか…

ボーはおそれている(2023)

常に不安を抱えている男ボー。ある日母が怪死し、葬儀のために帰省しようと自宅アパートを出たボーだったが............。 3時間ひたすら悪夢を見せられ続けるような映画で、映画館で観たら没入感も不快感ももの凄くて、どっと疲れました。そもそも仕事終わ…

堀江敏幸『雪沼とその周辺』

リーガルリリーの海さんがInstagramで紹介していたので読みました。雪沼とその周辺 (新潮文庫)作者:敏幸, 堀江新潮社Amazon「雪沼」という架空の寂れた田舎町を舞台に、そこに暮らす普通の人々の平凡な人生の哀歓を描く7編の短編集。作中に出てくる川の名前…

鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』感想

第14回小説現代長編新人賞を受賞した著者デビュー作。 ひょんなことから著者がスピッツファンだってことを知って読んでみました。晴れ、時々くらげを呼ぶ (講談社文庫)作者:鯨井 あめ講談社Amazon 高校2年生で図書委員の越前亨は、同じ図書委員の後輩の小崎…